ジュリア・ロバーツ、共演者と作りあげた“家族”に手応え!「全員が不可欠で特別」
「新聞で読むような乾いた数字の情報ではなく、私たちの心を動かす作品」。薬物依存症の息子を全力で守ろうする母親の姿と、家族の愛と絆をサスペンスフルに描き出した『ベン・イズ・バック』(公開中)。いま注目の若手スター、ルーカス・ヘッジズが演じる息子ベンを信じつづける母モリーを演じたジュリア・ロバーツは、本作についてそう形容する。
本作の物語はクリスマス・イヴの朝に19歳の少年ベン・バーンズが、薬物依存症治療の施設を抜け出し実家に突然戻ってくるところから始まる。母ホリーは温かく迎え入れ、妹アイヴィーと継父のニールはベンが自分たちの生活を脅かすのではと不安に駆られる。そんななかベンの過去への報いと思しき事件が起こり、なんとか過去を清算しようとするベンを守ろうと決意するホリー。しかしベンは、突然ホリーの前から姿を消してしまう…。
『エリン・ブロコビッチ』(00)で第73回アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞し、「オーシャンズ」シリーズなど数多くのヒット作品に出演。近年ではプロデューサー業も務めるなど、まさにハリウッド映画に欠かせない大女優の1人であるジュリア。彼女は今回の役を演じるにあたり、ホリーと同様に依存症の子を持つ母親たちに会うという選択をあえてせず、あくまでもそれに関する資料を徹底的に調べ、読み込みながら役作りを行ったのだという。
「依存症のお子さんを持つ母親だけに向けた、オンラインのフォーラムや記事が本当にたくさんあった。薬物使用や乱用全編を扱った、素晴らしいけど観るのがつらいようなドキュメンタリーもたくさん見ました。本当にたくさんの資料から知識を得ることができて、すごくいい準備になりました」と振り返ったジュリア。そして「けれど、それはとても悲しいことだと思います」と、長年にわたりアメリカ社会に蔓延る薬物問題を憂いた。
「薬物依存はアメリカ文化にあまりにも広く浸透してしまっているから、もはや麻痺してしまっている。そこに改めて日常を持ち込むような作品ではないでしょうか。ごく普通の家庭の人々に起こることなので、もしかするとこの家族は隣人かもしれないし、学校で一緒の子のことかもしれない。そのように、身近であることを強烈に意識することになる思います」。
本作の最大の特徴の一つは、ベンが帰ってきてから施設に戻るまでの24時間の物語だけを切り取っていること。それ以前のできごとはおろか、それぞれの登場人物のバックグラウンドについても描かれることなく、また演じたジュリアたちキャストにもすべてが説明されているわけではなかったという。そこでジュリアは「撮影が始まる前に一緒に遊んだり、話し合ったりしたんです」と、共演者たちと事前に綿密なコミュニケーションをとり、自発的に“家族”を作り上げていったことを明かす。
「それぞれ演じる人物が、家族としてあの日をどんな心境で迎えたんだろうと話し合いました。実際に撮影が始まって、毎日こなす量が増えてくるとそれはすごく役に立ったので、万全の準備で臨めたと思います」と振り返る。そして「本作の魅力は、家族を丸ごと描いている作品だということ。ひとりひとりの存在が理解を進めるきっかけになって、全員が重要な役どころを担い、不可欠で特別。おそらく誰かひとりが抜けても語ることはできなかったでしょう」と、ルーカスをはじめアイヴィー役のキャスリン・ニュートン、ニール役のコートニー・B・ヴァンスと築き上げた“家族”に、強い自信をのぞかせていた。
文/久保田 和馬