「ゴジラ」愛が強すぎて、勝手に主題歌制作!? [ALEXANDROS]が楽曲に込めた熱い“祈り”
『GODZILLA ゴジラ』(14)、『キングコング:髑髏島の巨神』(17)に続く、“モンスターバース”シリーズ待望の最新作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』が世界同時公開され、日本はもちろん北米をはじめとする世界各国でも週末興行収入で初登場1位を獲得した。
ゴジラだけでなく、モスラ、ラドン、キングギドラといった日本の人気怪獣たちが登場し、激しいバトルを繰り広げる本作は早くも大反響を巻き起こしているが、人気ロックバンド[ALEXANDROS] が日本版の主題歌「Pray」を担当していることにも注目が集まっている。
そこで、大規模ツアーを敢行中の[ALEXANDROS]のメンバーを緊急直撃! 映画が大好きで大のゴジラ・ファンでもあるボーカル&ギターの川上洋平、ベースの磯部寛之、ギターの白井眞輝に、主題歌抜擢の驚きや、楽曲に込めた想いを前後編でドーンと語ってもらった。今回はその前編をお送りする。
――今回、日本版主題歌の話を最初に聞いたときはどう思われましたか?
川上「ハリウッド版の新作が公開されるのはもちろん知っていたし、予告編も観ていてめっちゃカッコいいと思っていたんですよ。でも、自分たちが簡単に関われるものではないので、今年の初めに主題歌のオファーがあったときも、また別の『ゴジラ』の映画の話かな?って思いました」
磯部「俺の場合は興奮したっていう表現がいちばんあっているんですけど、自分がワクワクした存在に内側から関われるというのは、そりゃあ嬉しいですよね。僕らにとっては、ゴジラは絶対王者ですから」
白井「僕もゴジラは思い出深い怪獣ですからね。『ゴジラVSビオランテ』を父親に連れられて観たのがゴジラとの最初の出会いで、そこから何作か続けて観たんです。だから話を聞いたときは、一番最初に父親の顔が浮かびました」
川上「うちの父親はSF映画が苦手なんですよ。だから、気に入らないのかな? と思ったんですけど、ニュースで主題歌の件を知った父親から電話があって、『初めてSF映画を観ることになるな~』と言ってきて。世代的には54年の初代ゴジラの世代だと思うんですけど、それでも観てなかったんですよ。もしかしたら、そのときに観に行かせてもらえなかったから嫌いになったのかもしれない(笑)」
磯部「ああ、そうなんだ? 俺は自分から電話して報告したよ」
白井「僕は守秘義務で黙っているうちに、父親に言うのを忘れちゃったんです(笑)。そしたら、しばらくして父親から『オマエ、やったな! スゴいじゃん!』って言われて。すごく喜んでくれましたね」
――今回の主題歌「Pray」は、川上さんが映画のラッシュ(完成前の映像を粗編集したもの)を観て作られたものなんですよね。
川上「そうですね。もう、その帰り道ぐらいに、なんとなく“祈り=Pray”というテーマが浮かんで。東宝さんから『バラードの方がいいですね』って言われたんですけど、僕もそんなイメージでした。僕たちが以前『シン・ゴジラ』の製作発表を受けて勝手に作った『kaiju』という曲はわりと激し目だったんですけど、そういう感じではないなと思いました」
磯部「『kaiju』はいまでもライブでの定番曲なんですけどね」
――でも、そのときの情熱が通じたのかもしれませんね。
川上「そうですね。『ゴジラのことが好きなんですよ』という僕たちの想いをなんとなく知っていただいていたみたいなので、本当にありがたいです」
――今回のテーマはなぜ“祈り”だったんですか?
川上「今回の映画の裏テーマとも言える、“親子愛”のメッセージが僕の心にいちばん響いたんです。親子って、最初はとても近い存在ですけど、だんだん離れていきますよね。この映画は娘のマディソン(ミリー・ボビー・ブラウン)がひとりで困難に立ち向かうシーンが出てくる成長物語にもなっているけれど、その時に父親も母親も意外となにもできなくて。その姿を見たときに、唯一できるのが“祈る”ということなんだろうなと思ったんです。それに、今回の映画には初代『ゴジラ』のファンを喜ばせるものがすごく盛り込まれているじゃないですか? 渡辺謙さんの役名“芹沢猪四郎”もそうですけど、語り継いでいく気持ちやオリジナルに対するリスペクトもすごく感じたんですよね。そこには“親子愛”とはまた違う愛を感じたので、ただ激しいだけじゃダメだと思って、ああいうバラードっぽい曲にしたんです」
磯部「『Pray』は歌詞と曲のハマりもすごくよかったですね。川上が『もうすぐできそうだ』と言って送ってくれた最初のデモ音源を聴いた時から“祈り”という言葉があって、スムーズにリンクしたんです。自分のなかでも世界観がフワッと広がったし、あっ、こういう想いのなかでこの曲はできたんだなということが伝わってくる瞬間もあって。そこからイメージを膨らますのは楽しい作業でした」
白井「確かに“祈りたい”という強い言葉が、最初の仮歌のときからありました。でも、ゴジラって日本版でもそうですけど、最初から神のような存在で、人類の敵だったときもけっこう祈られる対象だったような印象があるんですよね。なので、“祈る”という言葉にゴジラとの共通性をものすごく感じて。僕たちの曲はゴジラとそんなにガチガチに繋がっているものではないとは思うけれど、“祈る”というキーワードが映画と観る人を繋ぐ架け橋になっているような気がします」
――演奏に関してはどんなことを意識しました?
白井「ギターソロがあるんですけど、そこはゴジラの咆哮をちょっとイメージしてやりました(笑)」
磯部「僕は川上から出てきた世界観を自分の想像力で膨らませて、そこでパッと出てくるものをなるべく素直に表現しようと思っていました。それが楽曲にとってもいい作用なると信じているので、そういう気持ちで臨みましたね」
――「Pray」を最初に聴かせてもらったときに、歌詞にある「君」というワードはゴジラのことを言っているのかな?と思いました。
川上「それでもいいと思います。“親子愛”もあるけれど、ゴジラという絶対的な存在を目の前にした時に、人類は立ち尽くして“祈る”ことしかできなくなりますから。大切な人のことを思う気持ちに変わりはないですしね」
――それにしても、伊福部昭先生の「ゴジラのテーマ」と並んで「Pray」がかかるというのは本当にスゴいことだと思います。
川上「光栄です。僕、いちばんカッコいいと思っていますから、『ゴジラのテーマ』が」
――今作のマイケル・ドハティ監督も「あの曲がかからないとゴジラ映画じゃない」と言っていました。
川上「いや、そうですよ。本当、そう。ゴジラの鳴き声もそうですけど、それだけでゴジラをすべて象徴しますからね」
<後編に続く>
取材・文/イソガイ マサト