ウィル・スミスが明かす『アラジン』“青いジーニー”の秘密、大スターとしての葛藤
ディズニーの名作『アラジン』が、いよいよ実写映画となってスクリーンに登場した。大いに話題となっているのが、ウィル・スミス演じる陽気なランプの魔人ジーニーの存在だ。“青いウィル・スミス”とネットでも盛り上がっているが、1年半ぶり15回目の来日を果たしたウィルを直撃すると「青いジーニーはすべてCGなんだ」と告白した。
貧しくも清らかな心を持つ青年アラジンと、王宮の外の世界での自由に憧れる美しい王女ジャスミンが運命的に出会い、ランプの魔人ジーニーに見守られながら“本当の願い”に気づいていく姿を描く本作。明るく陽気で、爆笑のマシンガントークを炸裂させるジーニーは、世界中で愛されている人気キャラクター。実写版の製作に際して「ジーニーってどうなるの!?」と誰もが思ったはずだが、“ハリウッド最強のエンターテイナー”ウィル・スミスが抜てきされ、スクリーンを舞台に見事に躍動している。
まず気になるのが、インパクト大の青いビジュアル。「青いジーニーはすべてCGなんだ」とウィル。「僕が青くなったと思っている人もいるけれど、実はすべてCG。ものすごい技術だよね」と語り、「そういった技術があるからこそ、セリフを何度も変えてみたり、アドリブを思い切り盛り込むこともできた。『もっとこうしてみたい、こうすればもっとおもしろくなるかも』とものすごく自由に演じたよ」と充実感もたっぷり。
改めて、ジーニーの魅力をどう感じているだろうか。ウィルは「“愛”というものはこういうものなんだと思わせてくれるキャラクター。最高に献身的で、ご主人様のためならエネルギーのすべてを注ぐんだ。これこそまさに愛だよね。『こんな存在がそばにいてくれたら』と思わせるようなキャラクターでもあるし、心の奥底では誰もが『自分もそうなりたい』と思っているはず。理想像であり、愛の象徴のようだよね」と分析。ウィルは本作のプロモーションとして先日、東京都内で行われたマジック・カーペットイベントにも出席した。サプライズで作曲家アラン・メンケンとコラボして歌とダンスを披露したり、プレミアム吹替版のキャストたちと笑いたっぷりのトークを繰り広げていたが、ファンのために全力パフォーマンスをする姿は、まさにウィルの語る“愛”そのもの。
ウィルにとってジーニーはハマり役だと感じさせられるが、「オファーを受けた当初はナーバスにもなった」という。それはアニメ版でジーニーを演じたロビン・ウィリアムズへのリスペクトからくるものだ。「ロビンのジーニーは、世界中の人がものすごく愛した。だからこそ演じるうえでは、初めはナーバスにもなったんだ。ちょっとノスタルジーを感じるようなキャラクターでもある。もし他の人が演じて、それを壊してしまうようなことになったら、僕自身も怒りを感じるよ。ロビンが演じたジーニーにオマージュを捧げること。そして自分の新しいジーニー像を作り上げること。その両方にトライしたかったんだ」。
自分らしい新しいジーニー像。もともとはラッパーとしてデビューしたウィルだけに、本作のジーニーを作り上げるうえでは「音楽が一番の助けになった」と語る。「音楽を思い浮かべていたら、自分のなかでジーニーというキャラクターが生き生きと生まれてきた。そしてジーニーは長い間、ランプに閉じ込められていたから、ここから出たら“パーティーしたいぜ”って思うはず。とにかく楽しみたいし、パーティーしたいし、ドレスアップもしたい…と想像していくことで、どんどんキャラクター像が作られていったんだ」。
気持ちのよい笑顔で「君たち、最高だね!」と盛り上げるなど、インタビュー部屋にもウィルの放つハッピーなオーラが充満していた。そんな彼だが「ジーニーはランプから離れられず、囚われの身なんだけれど、僕にとっては、“ウィル・スミス”という存在自体が手かせや足かせに思えた時があった」と激白する。「つまり、自分が作り上げてきたいままでのキャリアだよね。ムービースターとして成功して、出演した映画も常にナンバーワンになる…と思われて、いろいろなことが自由にやれなくなったり、自分らしく振る舞えなくなってしまった。ここ数年は、そういったものから自由になろうとしているんだよ」。大スターなりの葛藤を抱えているウィルだが、「今回の『アラジン』は僕が本当に誇り思っている映画。人々を幸せにできるマジックがあるんだ」と心を込める。やはり観客に最高の時間を届けることが、彼のパワーにもなっている様子だった。
取材・文/成田 おり枝