香取慎吾のサプライズ登場に場内騒然!『凪待ち』ロケ地凱旋で語った“復興”への想い
香取慎吾と、『孤狼の血』(18)や『麻雀放浪記2020』(公開中)など数々の話題作を手掛ける白石和彌監督が初タッグを組んだ『凪待ち』。このたび、本作のロケ地となった宮城県塩竈市で行われた完成報告試写会に、白石監督と共に香取がサプライズ登場し、観客を熱狂の渦に包んだ。
本作は、人生のどん底まで墜ちた男の再出発を描くヒューマンサスペンス。ギャンブル狂の木野本郁男(香取)は、恋人の亜弓(西田尚美)と、その娘の美波(恒松祐里)の故郷である、宮城県石巻市に共に戻る決心をする。亜弓は美容院を開業、郁男は印刷会社で働き始めるなど新しい暮らしがスタートするが、ある日、美波は亜弓と衝突し家を飛びだしてしまう。美波を捜すため車に乗り込む郁男と亜弓だったが、郁男は車中で自分を厳しく非難する亜弓に業を煮やし、一人で捜しに行くようにと車から降ろしてしまう。だが、その夜遅くに亜弓は何者かに殺害されてしまう。追い打ちをかけるかのように、郁男は社員をトラブルに巻き込んだという濡れぎぬをかけられ解雇される。恋人と仕事を失った郁夫は、自暴自棄になっていくが…。
昨年6月18日より撮影された本作が、約1年経った今月ついに公開されることを記念して、クランクインのロケ地となった塩釜水産物仲卸市場の食堂スペースにスクリーンを用意し、前例のない“魚市場内での試写会”が実現した。
この日集まったのは、映画製作に協力してくれた地元の漁業関係者約70名で、事前に伝えられていたのは白石監督が来場するということのみとあり、監督の呼び込みで香取が登場すると、場内は女性陣の悲鳴にも似た歓声で包まれた。
登壇した香取は、平日ということもあり年配の来場者が多い会場を見渡し、「僕のファン層もぐっと年代があがって、ビックリしています…」と話し、場内をどっと沸かせる。
トークでは昨年の撮影を懐かしんだ2人。香取は「昼間から酒飲んでるお兄さんに絡まれたりもしましたが(笑)、この市場のリアルな雰囲気が引っ張ってくれて、すんなりと役に入れました」と感謝のコメント。
人生を立て直そうとするも、不幸が重なり行き場のない状況に陥ってしまう郁男を好演し、新境地を開拓した香取。被災地での映画製作については「東京で生活していると、東日本大震災についてニュースで見る機会も減っていますが、実際現地に来るとまだまだ復興が進んでいない部分もあって。(ロケ地である)石巻の町中で出会ってお話させていただいた人たちの中にも、震災の話を進んで教えてくださる方もいれば、口を閉ざされる方もいました」と話し、「いろいろなことを感じさせてくれる、とても大事な時間でした」と結んだ。
最後に、白石監督が「震災の経験を次につないでいかなければいけないという想いがあります。“復興”は終わっていなくて、未だにそのなかで生きている人たちが沢山いるということを、伝えていかなければいけない」と作品に込めた想いを語り、場内は万雷の拍手に包まれた。
試写会で本編を鑑賞した、石巻市出身だという50代の女性は、「初めて観る慎吾ちゃんでした。ハードな場面もありましたが、映画全体に不思議な心地良さがあり、結末にも心を動かされました。美しい映像で地元を撮ってもらえてうれしかった」と、感慨深げに語っていた。『凪待ち』は、6月28日(金)より公開される。
取材・文/編集部