『スパイダーマン』最新作は「一番最後まで席を立たないで」と監督が訴える
「アベンジャーズ」シリーズの完結編『アベンジャーズ/エンドゲーム』(公開中)の興奮も冷めやらぬなか、トム・ホランド主演の『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』が6月28日(金)に日本で世界最速公開される。その全貌を早く知りたい!とはやる気持ちを抑えつつ、本作のメガホンをとったジョン・ワッツ監督を直撃。なんと28日は監督の誕生日だそうで「一番うれしいギフトになる」と大喜びだった。
本作の時間軸は、「エンドゲーム」での熾烈な戦いが終わり、「インフィニティ・ウォー」から5年ぶりにこの世界に帰ってきたピーター(トム・ホランド)たちが、以前の生活を取り戻そうとしているころだ。ピーターは親友のネッド(ジェイコブ・バタロン)やMJ(ゼンデイヤ)たちと夏休み旅行でヨーロッパを訪れることに。旅行中、ピーターの前に、元国家組織S.H.I.E.L.D.の長官、ニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)が現れ、各地で謎のクリーチャーが出現したことを告げる。
『アイアンマン』(08)から始まったマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」における“インフィニティ・サーガ”の、フェイズ3を締めくくる本作。ジョン・ワッツ監督は、本作で「ユニークなチャレンジ」をしたという。それは、「フェイズ3でのいろんなことを解決させつつ、MCUの今後を示唆するような作品にしなければいけなかったから」だとか。それはピーターをはじめ、5年ぶりに戻ってきた人たちの人生がどう描かれるのか、また、トニー・スターク亡きあと、アベンジャーズがどうなっていくのかが、本作で描かれるということだろうか。
今回の舞台はヨーロッパで、スパイダーマンが各国の名所旧跡に降り立つことに。たとえば、ピーターがヴェネチアの運河沿いをスイングしていくシーンもある。「ロケ地でいちばん心配だったのがヴェネチアだ。なぜなら機材も人間も食事もすべてボートで運ばないといけなかったから。でも、実際には意外とスムーズに物事が進んで安心したよ」。
MCUでは、愛嬌たっぷりの末っ子キャラだったピーターだが、敬愛していた師とも言えるアイアンマンことトニー・スタークを失ったいま、失意のどん底にいる。「でも、彼は常に喪失感と向き合ってきたから、今回もある程度、心の準備はできていたはず」と監督は言う。
さらに、ハッピー(ジョン・ファブロー)の口から、トニーがピーターに、自身の後継者として大きな期待を寄せていたことが告げられるが、ピーター自身もヒーローであることに葛藤していく。
ワッツ監督は、トム・ホランドについて「もともと若いのにすごくできる俳優だと思っていたけど、今回は撮影をしていて、思わず心を鷲づかみされる瞬間が何度もあった。彼はピーターというキャラクターをいろいろな側面から捉えていて、繊細な演技をしてくれた。今回は特にすばらしいと感心したよ」と賛辞を惜しまない。
ピーターの心にぽっかり空いた穴を埋める存在として登場するのが、ジェイク・ギレンホール演じる新キャラクター、ミステリオことクエンティン・ベックだ。コミックでは人気ヴィランとして知られるキャラクターのミステリオだが、今回は傷心のピーターに寄り添いつつ、彼とともに戦っていくようだ。
「コミックとは違う形でミステリオを紹介したかった」という監督。「突如、謎のクリーチャー“エレメンタルズ”が現れ、ミステリオとピーターが協力し合って戦わなければいけないという状況になる。2人はそこから信頼関係を築いていく。ピーターにとってミステリオは、スーパーヒーローとしての苦悩を初めて話せる相手となるんだ」。
ジェイクとトムは役柄だけではなく、実際にも意気投合したそうで、仲睦まじい現場でのオフショットがSNSで公開されている。「ジェイクはすばらしい俳優だし、とても頭のいいナイスガイなので、一緒に仕事をしていて楽しかったよ。なによりも良かったことは、トムとの相性が最高だったことだ。監督をしていて、もっと2人の共演シーンを作りたいと思うほど彼らはとても仲良くやっていた」。
前作『スパイダーマン:ホームカミング』(17)の監督に大抜擢された時は、手掛けた劇場監督作がたった2本しかない新人監督だったワッツ。しかし、同作を大ヒットに導き、続編となる『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』も監督したことで、スパイダーマンというキャラクターへの思い入れは実に深いそうだ。
「スパイダーマンは、一番身近なヒーローだ。彼はどんなに複雑で無茶苦茶な世界に置かれても、観ているとその気持が伝わってくるんだ。スパイダーマンは、自分で特別なパワーを求めて手に入れたわけではなく、ただ与えられただけなのに、その運命を受け入れていく。僕にとっては、多大にインスピレーションを与えてくれる存在だよ」。
フェイズ3が本作でフィニッシュしたとしても、MCUがさらなる広がりを見せることは間違いない。果たして、次の新作へのヒントは、どこまで本作に入れ込まれているのか?と、監督に聞いてはみたが、もちろんネタバレ厳禁のため詳細は話してもらえない。「1つだけ言えることがある。ぜひ一番最後まで観て!それだけだ」。はい!そこは期待どおり。これまでの作品同様に、エンドロールが終了するまで、絶対に席を立たないように。
取材・文/山崎 伸子