妻夫木聡、命がけの撮影現場を笑顔で振り返る!「死ななくてよかった」
ホウ・シャオシェン監督やジャ・ジャンクー監督ら、名だたる巨匠たちの作品の映画音楽を担当するなど世界を股にかけて活躍する作曲家、半野喜弘が『雨にゆれる女』(16)以来となる長編映画のメガホンをとった『パラダイス・ネクスト』(7月27日公開)のジャパンプレミア試写会が26日、スペースFS汐留にて開催。ダブル主演を務めた妻夫木聡と豊川悦司、そして半野監督が上映前の舞台挨拶に登壇した。
全編台湾ロケが敢行された本作は、台北と花蓮を舞台に繰り広げられる2人の男の逃避行を描いたノワール・サスペンス。世間から身を隠すように台北で生きる男、島(豊川)の前に突然お調子者で馴れ馴れしい牧野(妻夫木)が現れる。島が台湾に来るきっかけになった“ある事件”を知っているという牧野は何者かに命を狙われており、2人は追手から逃れるように花蓮へと向かうことに。日本を代表する2人の俳優に加え台湾の人気俳優の共演、さらに世界的作曲家である坂本龍一がテーマ曲を担当していることでも注目を集めている。
企画の立ち上げ段階から本作に関わってきというた妻夫木は「監督と初めてお会いしてから3年ちょっと。ようやくこの日が来たという感じです」と感無量の表情で挨拶をすると、半野監督とともに味わってきた苦楽を振り返りながら「なんとか最初は日本で立ち上げようとしていたんですけど、厳しいということで台湾のほうに持っていったら意外とトントン拍子で進んだ。夢見たいです」と述懐。
一方で「ブッキーが音頭とってると聞いて、やりたいなと思ったけど、最初に企画を聞いた時には本当に成立するのかな?とも思いましたね(笑)」と明かした豊川は、『ジャッジ!』(13)以来の共演となった妻夫木と撮影期間中にほぼ毎日一緒に食事をしていたことなど、仲睦まじいエピソードの数々を披露していく。「『ジャッジ!』の時から今度はがっつり共演したいねって話をしていただいていて、ようやくその夢が叶った。豊川さんはお兄ちゃんのように甘えさせてくれる存在なので、甘えさせてもらって、楽しかったです」と語る妻夫木に、豊川も満面の笑みを返すと「僕もブッキーが大好きですので、女性だったら恋していると思います」とその親密ぶりをアピール。会場からは黄色い歓声があがっていた。
そんな中、劇中で印象に残ってるシーンを聞かれた豊川は「やはりブッキーが命がけで演じたラストシーンじゃないでしょうか」と即答。「台風の後ですごい波だったんです。ボートを出すのも危険なぐらいで…」と語ると、妻夫木は苦笑いを浮かべながら「ちょっと沖に出るのに、ヘルメットを被ってゴムボートに乗って行かないといけないぐらい波が強くて」と、その壮絶な現場の様子を熱を込めて語る。半野監督が「どうしてもここで撮りたいなと泣きそうな顔の僕を見て、妻夫木くんは『僕行きますよ』と言ってくれたんです」と明かすと、会場からは「優しい〜」と妻夫木を讃える声が。
さらに妻夫木は「撮影が終わった後、またゴムボートで戻ってきたんです。僕が降りてボートを回収しようと引っ張ったら、波に飲まれてロープが切れて、ボートがなくなっちゃったんです」と衝撃的なエピソードを付け加えると、すかさず半野監督は「そのあとのシーンで使うボートだったんですごいヘコんでいたら、スタッフ全員が口を揃えて『妻夫木が乗ってなくてよかった』と言っていました」と振り返る。そして「死ななくてよかった、って感じです」と笑顔を見せた妻夫木。命がけで挑んだ本作が日本公開される喜びを、ふたたび噛みしめていた。
取材・文/久保田 和馬