【連載】『松本花奈の恋でも恋でも進まない。』第10回 言葉にできない

コラム

【連載】『松本花奈の恋でも恋でも進まない。』第10回 言葉にできない

気鋭の女子大生映画監督・松本花奈による好評連載。10回目のテーマは「言葉にできない」
気鋭の女子大生映画監督・松本花奈による好評連載。10回目のテーマは「言葉にできない」イラスト/あわい タイトル題字/松本花奈

「DVD&動画配信でーた」にて好評連載中の、注目の現役女子大生映画監督・松本花奈による日々雑感エッセイ「松本花奈の恋でも恋でも進まない。」。第10回のテーマは「言葉にできない」。「『恋でも恋でも進まない』というタイトルをつけておきながら、今まで一度も『恋』の話をしたことがなかった」…ということで、今回は松本監督の初恋エピソードを。

高校時代の初恋の人からFacebookで友達申請がきた!

先日、初恋の人からFacebookで友達申請がきた。そんな恋愛小説の書き出しのような出来事がまさか自分に起こるとは思ってもいなかったのだが、そのまさかが起きたのだ。初めてちゃんと好きになって、付き合った人だ。

さかのぼること約7年前、14歳の時。友人から「○○男子高校の文化祭に行くとナンパされるらしい」という何ともチャラい話を聞きつけ、私含めて3人の同じクラスの女子たちで、11月の少し肌寒くなってきた頃、○○男子高校に”ナンパをされに”わざわざ電車を1時間ほど乗り継いで出向いたのだ。途中、マフラーをして口元が少し隠れているほうがモテるかもしれない、と、この企画にいちばん前のめりだったリッちゃんが言い出し、新宿駅で降りてLUMINEであーでもないこーでもないと言いながらマフラーを買ったことをよく覚えている。文化祭に着いてから以降の経過はだいぶ端折るが、まあ色々あってそこで出会った2つ年上のもっくんという男の子と付き合うことになるのだ。

シャイで口数は少ないがいざという時に守ってくれる、そんな責任感の強さが好きだった。誕生日にバラの花束を100本くれたりだとか、一緒に遊園地に行ったりだとか、出会いは何だか不純だったかもしれないが、付き合ってからはちゃんと好きで、同じ時間を共有していた。結局もっくんの大学進学や私の高校受験の時期が重なりお互いが忙しくなって別れてしまったのだが、良い思い出として残っている。

これまで人並みに少女漫画を読んだり、恋愛映画を観てきたし、もっくんと別れてからも恋愛はしてきたつもりだ。だから、カップル設定の男女のシーンを撮ることに抵抗感はなく、むしろ自然に演出できる自信があった。

もっくんからFacebookで友達申請がきた翌日、デート・シーンの撮影があった。お家デートで何てことない会話をしながら、一緒にご飯を食べているというシチュエーションだ。「よーいスタート!」の合図をかけ、演技が始まる。だが、どうしてもこの2人がカップルには見えないのだ。実年齢も近いし、美男美女の2人なのだが、どうにも会社の違う部署のあまり親しくない同僚同士にしか見えない。でも、それは言葉にできない空気感の問題で、台詞の言い方や動きを変えたところで引っかかる違和感というのがどうしても拭いきれなかった。

その日はそれで終わり、その翌日に知り合いの役者さんとご飯を食べる予定があったので、そこで話してみた。どうやったら芝居で恋愛感情をつくれるのか?と。「それはもう、相手の女優さんを本気で好きになるしかないですよ」とまっすぐ目を見て言われた。それはどうなのだろう…と思いつつ、とりあえず今後の目標はそういうシーンの演出をちゃんとできるようになることだな、と感じた。

今月の旅の一枚:台北で遠足

台北の駅で遭遇したインドネシアの学生たち
台北の駅で遭遇したインドネシアの学生たち

台湾に行きました。台北の駅で遠足中のインドネシアの学生らに遭遇…! 少々戸惑いましたが、何だかすごく楽しそうでした。

●松本花奈プロフィール

【写真を見る】監督を務めた連続ドラマ『ランウェイ24』が7月から放送開始
【写真を見る】監督を務めた連続ドラマ『ランウェイ24』が7月から放送開始撮影/植村忠透

1998年生まれ。中学生の頃より映像制作を始める。慶應義塾大学在学中。主な映画監督作は『脱脱脱脱17』('16)、『過ぎて行け、延滞10代』('17)、オムニバス映画『21世紀の女の子』('18)など。撮影を担当したNMB48太田夢莉1st写真集『ノスタルチメンタル』が発売中。映画最新作は、第11回沖縄国際映画祭で上映された『キスカム!come on,kiss me again』。連続ドラマ『ランウェイ24』がABCテレビ(7月7日スタート毎週日曜夜23:35〜)&テレビ朝日(7月6日スタート毎週土曜2:30〜)にて放送。

文/松本花奈

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