夢はバレリーナ…性の揺らぎをしなやかに体現したこの美人、一体何者?<写真11点>
バレリーナを夢見るトランスジェンダーの主人公が、困難を乗り越えながらバレリーナを目指す姿をエモーショナルに描く『Girl/ガール』(7月5日公開)。18年のカンヌ国際映画祭でカメラドールも受賞した本作で傑出した存在感を放っているのが、主演のビクトール・ポルスターだ。
09年にベルギーの新聞に掲載された実話に心を動かされたルーカス・ドン監督が、約9年越しに完成させた本作。男性の体で生まれたものの「女性としてバレリーナになりたい」という夢を見る主人公のララは、強い意志と才能、そして全力で応援してくれる父の支えにより難関のバレエ学校への入学を認められる。しかしクラスメイトの心無い言葉や体の成長など、様々な問題に直面していく…というストーリー。
ハイレベルなダンスと繊細な感情を表現できる演技力が必要な役柄ゆえ「苦労をすることは最初から分かっていた」とルーカス監督が語るように、男女問わず約500人のオーディションを行うも、適任は見つからなかったというララ役。そこでクラスメイト役のキャスティングを先に行ったところ、彗星のように現れたのがビクトール・ポルスターだった。「まるで天使のようだったよ。彼の踊りを見て、僕は『彼しかいない』と確信したんだ」と感じたルーカス監督によってララ役に抜擢されたのだ。
透明感のある美しい顔立ちから、女性の衣装とヘアメイクによって、外見ではすんなりとララのキャラクターに入り込んでいる彼だが、準備を要したというのがダンスだ。普段ロイヤル・バレエ学校で男性としてダンスの練習に励んでいる彼は、撮影までの3ヶ月間は徹底的にトウシューズで踊るレッスンを受けたのだそう。撮影が終わる頃にはすっかり体が女性のダンスを覚えていたという彼が披露する劇中の姿は、しなやかかつ優雅で柔らかみを帯びており、役柄に抜群の説得力を与えている。
またダンスと並び圧巻なのが、本作が映画初出演とは思えない演技。幼少期に演劇クラスに通った経験を持っているビクトールだが、先生にダンスを褒められスピンしながらこぼす女性らしい微笑みや、嫉妬から生まれる周囲の意地の悪い言動に対する戸惑いから出てしまう笑みなど、笑顔ひとつ取っても異なる感情を自然に表現している。自らの性に揺らぐ繊細な演技は、カンヌのある視点部門で最優秀演技賞を受賞したのも納得だ。
ルックスから心の内面、ダンスに至るまで、ララ役は彼にしか演じられなかったのではと思ってしまうほど。そんなビクトールの姿を捉えた特別映像があるので、まずはこちらをチェックして、スクリーンでも堪能してほしい。
文/トライワークス