NHK連続テレビ小説「なつぞら」での演技も話題に。歳を重ね、魅力を増した俳優・井浦新が見せる大人の渋さ
現在放送中のNHK連続テレビ小説「なつぞら」で、広瀬すず演じるヒロインの勤め先の先輩で、彼女を優しく見守る仲を演じ、じわじわと評判を高めている井浦新。そんな彼が現在公開中の『こはく』では、長崎を舞台に幼いころに生き別れとなった父親を探す兄弟の兄を演じ、渋みのある演技で説得力を与えている。
幼いころに別れた父が営んでいたガラス工場を継ぎ、経営者として認められるようになった亮太(井浦新)。父と同じく離婚により子どもたちと別れたことが、現在の妻との生活にもふとした時に小さな影を落としていた。そんな時、定職につかずフラフラしている兄の章一(大橋彰)から、街で父を見かけたと告げられた亮太は兄と共に父を捜していくなかで、父や母の人生に思いを巡らせていく。
父との別れという過去に縛られ、妻の妊娠が発覚した際も喜びと同時に自分に父親が務まるのかと、一抹の不安も覗かせるような複雑な心の内を抱える亮太。妻や周囲に見せる柔らかな笑顔からは温かみを放つ一方で、遠くを見つめるような虚ろな目からは男の哀愁のような渋さを漂わせたりと、井浦は目の表情一つで、複雑な人物像を見事に体現している。
若い頃は『ピンポン』(02)や『20世紀少年』シリーズなど、奇抜なキャラもので存在感を放っていた井浦だが、近年は年齢を重ねるごとに増す、落ち着いた大人の魅力をまとった深みのある役者へとキャリアアップを続けており、そんな彼の現在の魅力が、本作でも最大限に発揮されている。
また、井浦と並んで存在感を見せているのが兄・章一役の大橋彰だ。大橋は、実はお笑い芸人のアキラ100%であり、本作が役者として初めての大役だ。職に就かずフラフラし、虚言癖を持つつかみどころのないキャラクターを、抑揚を抑えたセリフ回しや覇気のない表情など自然な演技で表現。さらには感情的になった時に見せる熱のこもった表情まで、もともと俳優志望で学生時代に演技経験を持つという大橋は、その実力を見事に発揮している。
現在44歳という井浦と大橋の、年齢を重ねた大人の男だからこそ出せたリアルな渋さが説得力につながっている本作。遺憾無く発揮された彼らの実力をスクリーンで確認してみてほしい。
文/トライワークス