劇場公開40周年の『ルパン三世 カリオストロの城』が、“新作以上”のクオリティで帰還!4K ULTRA HDで再加速する魅力
アカデミー賞長編アニメーション映画賞とベルリン国際映画祭の最高賞にあたる金熊賞を受賞した『千と千尋の神隠し』(01)など、世界のアニメーション映画界に多大な影響を与えてきた巨匠、宮崎駿監督。現在制作中の監督最新作『君たちはどう生きるか』の完成が待ち望まれる彼が初めて劇場用映画監督を務め、公開から40年経った現在でも日本のアニメーション映画屈指の名作として語り継がれている『ルパン三世 カリオストロの城』(79)が、このたび4K ULTRA HDブルーレイとして発売される。
今年4月11日にこの世を去ったモンキー・パンチの代表作である人気漫画を原作にしたTVアニメ「ルパン三世」の劇場版第2弾として、1979年12月に公開された本作。公開当時は興行的に大成功とは言いがたい成績であった一方で、日本のアニメーション映画賞としては最も長い歴史を持つ毎日映画コンクールの大藤信郎賞を受賞するなど、その緻密で計算され尽くした場面設計や従来のアニメーション映画の常識を覆す表現の数々が高く評価されることに。その後、宮崎監督がアニメ界を牽引するようになるにつれて、彼の原点と呼べる作品のひとつとして再評価が進み、実に16回におよぶ地上波でのテレビ放送を経て多くのファンを獲得。製作から20年を経た1999年、8回目の放送で自己ベストの23.4%という高視聴率を記録するなど、まさに世代を超えた不朽の名作へと昇華することになった。
そして2014年にデジタル・リマスター版が劇場公開され、2017年には特殊効果演出を加えたMX4D版が公開。現代の映画技術の発展に合わせてたびたび進化を重ねてきた本作が、製作40年という節目を迎える今年、4K ULTRA HDとしてさらなる進化を遂げた。既存のパッケージ規格としては最高レベルのものといえる4K ULTRA HDは、従来のブルーレイと比較して4倍の解像度を誇り、またHDR(ハイ・ダイナミック・レンジ)を採用したことによってこれまで表現不可能だった光や闇を映しだす。さらに人間が視覚するリアルな色彩へと限りなく迫ることにより、このうえない臨場感を作りだしてくれるのだ。この技術によって、公開当時のフィルムをも凌駕するほど鮮やかな映像で、本作を堪能することができる。
実際に本編映像を観てみると、その違いは一目瞭然。全体的な明るさはもちろんのこと、色の濃淡であったりアクションの滑らかさや立体感が生みだされている。数ある名シーンのひとつ、城に幽閉されたクラリスにルパンが手品を見せるシーンでの薄暗い部屋の雰囲気や夜空がよりムーディに映しだされ、2人の表情をさらに豊かに感じ取れる。また、ルパンが城の屋根を走る有名なアクションシーンでは、その動きの滑らかさはもちろんのこと、遠くの背景や屋根のディテールがくっきりとわかることで迫力が倍増している。
そしてもちろん、宮崎アニメの醍醐味ともいえる食事シーン。次元とルパンが奪い合った、あのミートボールスパゲッティはアツアツの温度感を感じさせるほどに美味しそうに見え、大怪我を負ったルパンがハムを貪るシーンでは、色鮮やかな肉の色味でこちらまで空腹感を感じるほどだ。そのほかにも画面に映るものすべてにおいて、見慣れたはずの作品に驚きが詰まっており、見どころを挙げればきりがない。
しかも、音声仕様としては旧作アニメーション作品のパッケージ化では初となる7.1chサラウンドを採用。映像と音、両面から最高級の臨場感と大迫力を味わうことができ、これまで何度も本作を観てきた人にとっても、いままで経験したことのない『カリオストロの城』との出会いが待っているはずだ。
また、封入特典として同梱されるスペシャルブックレットには、ルパン一味はもちろんのこと銭形警部や本作のヒロインであるクラリス、そしてカリオストロ伯爵ら登場キャラクターたちの詳細な設定資料に加え、オープニングシーンをはじめとした名シーンの絵コンテ集が収められている。これらの貴重な資料にくまなく目を通してから本編映像を見れば、またひと味違う楽しみ方ができること間違いなしだ。
現在放送されているNHK連続テレビ小説「なつぞら」の効果で、いま日本のアニメーションの草創期への注目度は急上昇中。しかも同作で染谷将太が演じている新人アニメーターの神地航也は宮崎駿監督がモデルになっているともいわれているだけに、彼の作品群は今後さらなる注目を集めることだろう。
是非ともこの機会に、宮崎監督の演出力の高さが際立つ本作を4K UHDブルーレイで観て、いまや日本が世界に誇るコンテンツへと成長を遂げたアニメーションの歴史に思いを馳せると同時に、最新の映像技術によって成し得た、圧巻のクオリティを目の当たりにしてほしい。
文/久保田 和馬