唐沢寿明と竜星涼が語る、『トイ・ストーリー4』の声優を演じる重み
1996年に世界初のフルCGアニメとして公開された1本目の『トイ・ストーリー』から23年、『トイ・ストーリー3』(10)から9年ぶりとなるシリーズ第4弾『トイ・ストーリー4』が公開中だ。本作の日本語吹替版でシリーズを通してウッディ役を演じてきた唐沢寿明と、新キャラクターのフォーキー役に抜てきされた竜星涼にインタビュー。同じ事務所の先輩後輩である2人が、『トイ・ストーリー4』の魅力に迫った。
ウッディやバズらおもちゃたちは、新たな持ち主のボニーを日々温かい目で見守っている。ある日、幼稚園に体験入園することになったボニーを心配したウッディは、こっそり彼女のリュックに忍び込み、一緒についていくことに。幼稚園でボニーは、おもちゃのフォーキーを手作りし、大のお気に入りとするも、フォーキーは自分をゴミだと思い込み、常にゴミ箱へ飛び込もうとする。
「おもちゃたちが自立したり、ウッディも人を諭したりする、大人っぽい話」(唐沢)
長年ウッディ役を務めてきた唐沢は「最初はここまでシリーズが続くとは思わなかったです」と率直な思いを語りつつ、若い人に「子どものころから『トイ・ストーリー』を観てました」とか「大人になってからもずっと『トイ・ストーリー』が好きです」と言われるたびに「ウッディ役をやっていて良かった」と実感するそうだ。
唐沢は『トイ・ストーリー4』については「ストーリー的には、ものすごく大人っぽい話」と受け止めた。「ウッディは、『自分がなにをしたいのか?』と考えた時に『自分の心の声に従え』と言うんです。おもちゃたちが自立したり、ウッディも人を諭したりする立場になるので」。
竜星は「フォーキーは、みんなを巻き込んでいかなきゃいけないキャラクター」と捉え、「素直に言いたいことを言いますが、それが嫌味っぽくならずに、どこかかわいらしい部分を残したい。監督からも5歳児のような声を意識してほしいと言われたので、自分でかみくだき、とにかく若い声を出そうとしましたが、その作業が難しかったです」と語った。
本作の意外な結末について、唐沢はどう受け止めたのだろうか。「『トイ・ストーリー』は1、2、3と観ていくうちに、キャラクターも観客もいろんなことを学んでいくんです。3ではアンディが大学生になり、もうおもちゃはいらないということで、ちゃんと卒業して、ボニーにあげるわけで。4ではみんなが新しい決断をしていくんだけど、そういう意味ではシリーズすべてが成長物語になっています。今回、フォーキーという新しいキャラクターが出てくるんだけど、高いおもちゃではなく、身近にある材料で作って遊べるという創造性を培おうとしています。そういう意味でも、『トイ・ストーリー』シリーズって、とてもよくできていると思います」。
「唐沢さんとは、ウッディとフォーキーの関係、そのままです!」(竜星)
竜星は、今回の結末について「単純に、感動しました。そこは1、2、3で築き上げてきた友情や絆が、4で1つの区切りを迎えるので、観ている側としては、どこか胸が熱くなる部分がありました」と大いに心を揺さぶられた様子。
また、唐沢は、当たり役となったウッディについて「ある意味ありがたいことですが、僕はプロの声優ではないので、その後もいろいろとオファーはもらうけど、声の仕事は自分の本業じゃないから、ウッディだけでいいかなとは思っています」と、浮気はしないと断言。「ウッディ役をやって、それで調子にのってやるのは自分っぽくない気がして。やっぱり俳優という本業をちゃんとやるべきかなと」。
唐沢が56歳、竜星は26歳で、親子ほど年が離れている2人。唐沢が「お父さんみたいなものだよね」と言うと、竜星は「ウッディとフォーキーの関係、そのままです!お父さんと言うと、それはそれで失礼な話かもしれませんが、確かに親でもあり、兄貴みたいな感覚でもあります」と、良好な関係性を築けているようだ。
劇中で、フォーキーの世話係となるウッディだが、唐沢も竜星について「僕からしたら、竜星にはたくさんの経験を積んでほしいと思います。彼はまだまだ若いから」と、まさに親のような目線で見ているようだ。
「僕もそうだけど、ディズニー映画でこういう役を演じると、絶対に悪いことはすべきじゃないという気持ちにさせられます。だから、彼がフォーキー役を演じたのは、いいことだったかなとすごく思います」。
世界中のファンたちが待ち望んでいた『トイ・ストーリー4』。最後にウッディがした選択を、観客はどのように受け止めるのだろうか。観終わったあと、改めてシリーズが伝えるメッセージの奥深さにうならされそうだ。
取材・文/山崎 伸子