【連載】『松本花奈の恋でも恋でも進まない。』第11回 体験教室

コラム

【連載】『松本花奈の恋でも恋でも進まない。』第11回 体験教室

気鋭の女子大生映画監督・松本花奈による好評連載。11回目のテーマは「体験教室」
気鋭の女子大生映画監督・松本花奈による好評連載。11回目のテーマは「体験教室」イラスト/あわい タイトル題字/松本花奈

「DVD&動画配信でーた」にて好評連載中の、注目の現役女子大生映画監督・松本花奈による日々雑感エッセイ「松本花奈の恋でも恋でも進まない。」。第11回のテーマは「体験教室」。“趣味”と“特技”をきかれることが嫌い、という松本監督が趣味&特技をつくるべくタップダンスの体験教室を訪れるが…。

 

特技&趣味として定着させるべく、タップダンスの体験教室へ

「休日は何をしてるんですか?」「これだけは誰にも負けないゾっていうことは何ですか?」

これは、私がされたくない質問トップツーである。つまり“趣味”と“特技”をきかれるのが嫌なのだ。なぜなら理由は単純明快で、そんなものないからだ。小学生の時は習い事で一応バレエ、中学生の時は途中で辞めてしまったが一応バスケ部、高校生の時は一応ダンス部に所属していたが、正直どれも頭に一応、とつけないと言うのが恥ずかしいくらい何となくやっていただけだった。楽器や料理や運動に関しては人並み以下だと自他共に認めているが、かといって人並み以上になるべく努力しようという気はさっぱり起こらない。トーク力があるわけじゃないし、文章力が特段秀でているわけでもない。おまけに方向音痴で、24時間中18時間くらいは常に眠い。本当、嫌気が差す。

ということで、昨年末に(当時進めていた企画に絡んでいたこともあり)、特技&趣味に定着させるべくタップダンスの体験教室へと足を運んだ。一応ダンス経験者であるのでとっつきやすいだろうという安易な考えだった。お世話になっている脚本家さんと一緒に行ったのだが、その日は12月25日、クリスマス当日だからか、体験者は私たち2人だけであった。わざわざその日を選ばなくても良かったのだが、年末年始のバタバタはありつつも年内にはスタートさせたいという気持ち的な問題でその日しか予定が合う日がなかったのだ。

渋谷駅から10分ほど歩いたビルの中にある小さな鏡張りの部屋でレッスンは始まった。先生は50代くらいの女性。まずは靴を貸してもらい、簡単なステップから。ステップを置いた状態からヒールを床に落とすヒールドロップ、床を掘るようにヒールの角を当てるディグ、かかと落としの方向にヒールの角を当てるリバースディグなどなど。先生の説明を受けたあと、どうすべきか頭では理解しているし、何が正解かも大体分かる。が、足が全く思う通りに動いてくれないのだ…。初めて教習所で車を運転した時に、足首の普段使わない筋肉が痛み出した時の感覚と似ている気がした。完全に舐めていた。

翌日の脚本家さんとのLINEの内容がこれだ。

「足、バチボコ痛いわ。付け根の辺りがもう、バチボコ痛い…」

「私、意外と筋肉痛は大丈夫でした! が、何か身体が怠いです」

「身体が怠いのは別の問題では。お尻もめっさ筋肉痛やわ…」

それから約半年が経ったが、私たちが体験者から受講者になることはなかったのはお察しの通りだろう。

さて、話は少々変わるが、連載を始めて早1年…というわけで来月号から写真を増やしたり、題字を変えたりとプチ・リニューアルを図っている。あわいさんのイラストも変わるかも…!とはいえ、内容はこれまでと変わらず日々のことをポツポツと書いていきますので変わらずお付き合いくださるとうれしいです。

 

今月の後悔の一枚:ダンス・シューズ

【写真を見る】体験教室のために松本監督が用意したダンス・シューズ
【写真を見る】体験教室のために松本監督が用意したダンス・シューズ

少しだけサイズの小さかったダンス・シューズ。

床の剥がれが色々なことを物語っています。

続けてみても良かったのかな、と今になって少しだけ後悔しています。

 

●松本花奈プロフィール

監督を務めた連続ドラマ『ランウェイ24』が7月から放送中
監督を務めた連続ドラマ『ランウェイ24』が7月から放送中撮影/植村忠透

1998年生まれ。中学生の頃より映像制作を始める。慶應義塾大学在学中。主な映画監督作は『脱脱脱脱17』('16)、『過ぎて行け、延滞10代』('17)、オムニバス映画『21世紀の女の子』('18)など。撮影を担当したNMB48太田夢莉1st写真集『ノスタルチメンタル』が発売中。映画最新作は、第11回沖縄国際映画祭で上映された『キスカム!come on,kiss me again』。7月より、ABCテレビ&テレビ朝日にて連続ドラマ『ランウェイ24』が放送中。

文/松本花奈

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