『太平洋の奇跡』サイパンプレミアで竹野内豊「この映画がなければサイパン戦を知ることはなかった」
太平洋戦争下のサイパン島で孤軍奮闘した実在の日本兵の姿を描く『太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男』(2月11日公開)のサイパンプレミアが1月31日、舞台となったサイパンで行われ、出演者の竹野内豊、山田孝之、平山秀幸監督が出席した。
3人は当日午前中より、タッポーチョ山、バンザイクリフ、極楽谷などサイパン戦ゆかりの地を訪問。夕方には、島唯一の映画館、ハリウッドシアターにてサイパンプレミアを開催。劇場を訪れた現地の人たちの前で舞台挨拶を行った。
主演を務めた竹野内は「去年4月、この映画の撮影に入る前、ここサイパンに来ました。そしてまたこうしてサイパンに戻ってくることができました!」と大喜び。サイパンの印象を山田は「どこに行っても悲惨でしたね。月日が経っているとは思えないくらい生々しく、薬きょうと花瓶とか残っていて。どこに行っても慰霊碑が立っていて、“平和”と書いてあるのですが、そもそも平和っていうのが何なんだろうって思う。人それぞれ考え方や求めているものが違うから戦争が起きるのかなって。僕には戦争を止める力はないですが、何とかならないのかなって感じます。だから、この映画がきっかけになれば良いですね」と悲痛な表情をのぞかせた。
上映後にはスタンディングオベーションを受け、平山監督は「60数年前には敵だったアメリカの方々と一緒に見ました。どういう感想を持つのだろうかが一番気になりました」と感慨深げに答えた。観客から握手を求められていた竹野内は「アメリカの軍事関係者の方にも『良かったよ』と言っていただき、握手を求められ、嬉しかったです」と顔をほころばせた。
また、3人はこの日、太平洋戦争で亡くなった多くの人々の霊を慰めている中部太平洋戦没者の碑前で、全国から集まった総数約11,000羽の千羽鶴をお供えする慰霊祭セレモニーを行った。中部太平洋記念碑に折り鶴を捧げた時を振り返った竹野内は、「(慰霊碑には)安らかに眠ってくださいということと、日本から鶴を持ってきた報告、映画も完成して上映させていただきますとご報告しました。(日本政府が建てた)慰霊碑の後に、(個人的に)遺族の方が建てた慰霊碑があるなんてことすら知らなかった。サイパンに来たらそんなことも知ってほしい」と呼びかけた。約11,000羽のうち、約8,000羽は竹野内が沖縄から北海道まで全国9ヶ所(総移動距離15,000km)を回った“太平洋戦争を伝えるキャンペーン”で、一般の方が1人1羽ずつ折ってもらったもの。キャンペーンを無事に終え、竹野内は「日本の各地には今でも戦争の傷跡が残ってるんだと改めて感じました。こんな機会がなかったら知らないことだらけだったので、改めて戦争という言葉だけで戦争自体を理解した気になっちゃ駄目だなと思いました。この映画がなければ、(皆さん)サイパン戦のことを一生知ることがなかったのではないかと思います」と、心から感謝を述べた。【Movie Walker】