【レビュー】“命の選択”を賭けた物語に没入…驚きが詰まった『二ノ国』へ旅立とう!
レベルファイブの日野晃博が製作総指揮/原案・脚本を務め、スタジオジブリ出身の百瀬義行が監督した青春ファンタジー映画『二ノ国』が、いよいよ公開となった。日本アニメ界屈指のスタッフとキャストが集結し、異世界へ迷い込んだ高校生たちの姿を描く本作。スリリングな冒険、現実世界と命のつながりを持つ魔法世界“二ノ国”を巡るドラマチックな展開、みずみずしい恋と友情など、驚きと感動の詰まった旅へと観客を誘ってくれる。
2010年に発売され、海外でも高い知名度と人気を誇るゲーム「二ノ国」を原案とした本作。現実の世界の一ノ国で暮らす主人公のユウ(山崎賢人)、ハル(新田真剣佑)、コトナ(永野芽郁)の3人は、幼なじみで同じ高校に通う親友だった。しかしコトナが突然に何者かに襲われ、命の危険にさらされてしまう。彼女を必死で助けようとするユウとハルが迷い込んだのは、魔法の世界“二ノ国”。そこにはコトナそっくりなアーシャ姫がいた。コトナとアーシャ姫の命がつながっていると知ってしまった時、ユウとハルは究極の選択を迫られる…。
普通の高校生たちが異世界でバトル!
現実と違う世界へ行ったら、こんなことができるかも…という想いはいつだって、人々を魅了するもの。普通の高校生たちが、巨大なドラゴンや妖精、獣人たちが歩き回る異世界へと迷い込む展開にワクワクとさせられる。スタジオジブリで『火垂るの墓』(88)や『千と千尋の神隠し』(01)の原画を手掛けたほか、『もののけ姫』(97)のCGも担当した百瀬監督が、“ジブリイズム”を存分に発揮。“二ノ国”のビジュアルについて百瀬監督は「中世ヨーロッパの街並みをイメージしながらも、特定の街を描くのではなく、現代風に鮮やかで美しく、それでいて雑多な雰囲気を出しました」と語っており、レジェンドの描くファンタジックな世界に注目だ。
ユウとハルが“二ノ国”で出会うのは、コトナそっくりなアーシャ姫。コトナ同様、アーシャ姫の身にも危機が迫っており、姫を救うために剣で雄々しく戦ったユウとハルは“二ノ国”で勇者に!現実世界では味わえないスリリングな状況に、胸が高鳴る。さらにドキドキとさせられるのが、ユウの体験する甘酸っぱい恋模様。現実世界でのユウはコトナに密かな恋心を抱いているが、コトナはハルの恋人。自分の恋は叶わないと、心に秘めた状況のなか、異世界に飛ばされてコトナそっくりのアーシャ姫に出会うユウ。姫なのにおてんばでキュートなアーシャ…。ユウがアーシャに惹かれていくのも納得だ。「ドラマチックな出会い、来た!」と声を出したくなるようなストーリー展開で、どこかさみしげだったユウの表情が明るくなっていくのを見ていると、彼を応援したくなる人も多いはずだ。
“一ノ国”と“二ノ国”を行き来する、スピード感
異世界転生ものでは、異世界での冒険に終始する作品も多いが、主人公たちが現実世界と魔法世界を行ったり来たりするスピード感も、本作の大きな見どころ。陰謀渦巻く“二ノ国”での冒険に飛び込んだユウとハルだったが、ある瞬間が訪れると“一ノ国”へと帰還。2つの世界には、命のつながった“もう一人の自分”がいると知ったユウは、“二ノ国”の謎を解こうとする。頭脳明晰なユウの本領発揮といったところで、“一ノ国”と“二ノ国”を行き来しながら、ネタバレ厳禁のラストまでグイグイと観客を惹きつける。
音楽を担当した久石譲は「一の国と二ノ国では変化もつけています。一の国はリアルワールドなので、小さな編成に。二ノ国に行ったらフルオーケストラに。音楽でも二ノ国に行ったことがわかるようにしました」とコメント。世界にその名を轟かせる久石の音楽はさすがの一言で、勇ましいメインテーマをはじめすばらしい楽曲の数々が、エモーショナルなセリフやストーリー展開をより一層に輝かせている。
浮かび上がる、主人公たちの覚悟と勇気。究極の“命の選択”に胸が熱くなる
勇者、バトル、姫との恋など、興奮必至の要素が盛りだくさんの本作だが、そこから浮かび上がるのは「大切な人を守りたい」という主人公たちの血の通った覚悟と勇気。もう一人の自分がいる“二ノ国”には、「どちらかの命を救えば、もう一方が死ぬ」という残酷なルールがあった。つまりコトナを救えばアーシャ姫が、アーシャ姫を救えばコトナが死んでしまうのだ。アーシャ姫に惹かれていくユウ、“コトナを救うためだったらなんだってする!”と宣言するハル。親友同士だった2人が、大切な人を守るために敵対関係へと発展。せつない運命に翻弄されることとなる。自分の愛する人を守るため、別の人間の命を奪うことはできるのか?普通の高校生として過ごしてきたユウとハルが戦士として立ち上がり、究極の選択を迫られる姿に胸が熱くなる。
また主要キャストには、俳優として目覚ましい活躍を見せているフレッシュな3人が顔を揃えた。ナイーブだけれど、“二ノ国”での冒険を通して成長していくユウ役に山崎賢人。現実世界ではスポーツ万能のモテモテ男子だが、次第に苦悩に追われていくハル役に新田真剣佑。そして永野芽郁が、コトナとアーシャ姫の2役にチャレンジ。初めてのアニメ声優となった3人が、壮大なドラマに見事に命を吹き込んでいる。日本の才能たちが紡ぎあげた圧倒的な世界を、是非ともスクリーンで楽しんでほしい。
文/成田 おり枝