香川照之、『あしたのジョー』の山Pと伊勢谷を絶賛!段平役も超こだわった!
実写版映画『あしたのジョー』が、遂に2月11日(金)に公開される。山下智久の矢吹丈と、伊勢谷友介の力石徹という絶妙なキャスティングが話題の本作で、この人がいなければ映画が成り立たなかったキーマンが、丹下段平役の香川照之だ。筋金入りのボクシング愛好家である香川は、本作で俳優の域を超えた“ボクシング監修”的な役割まで買って出た。そんな香川に、現場の舞台裏の話を聞いた。
高森朝雄(梶原一騎)×ちばてつや原作によるスポーツコミックの金字塔「あしたのジョー」が映画化されると聞いた時、香川は驚いたが、段平役に決まってからは、曽利文彦監督やトレーナーと共に、山下と伊勢谷にボクシング指導をしていった。「僕が見てきた試合の中で、映画に合うシーンを提案したり、やって見せたりしました。僕は30年間ずっとボクシングを見てきて、20年間俳優もやってきたので、ボクシングを“俳優語”で通訳していた感じです。ボクサー役のふたりが恥ずかしくないよう、ずっとボクシングをやってきたかのように見せるのが僕の仕事だ、ぐらいに思っていました」
香川のボクシングへの情熱にはただならぬものがあるようだ。「本来なら、現場では多くの俳優が自分のルールで芝居をやっているので、口出しはしないんです。でも、ボクシングに関してだけは止められない。ダメな所は全部言って、直させる。一俳優の個人業としての関わり方じゃなかったです。映画全体の“船”を感じていました」
主演の山下については、“21世紀の矢吹丈”を作ったと評価する。「山下さんは『あしたのジョー』を知らない世代で、クールに生きることが美徳とされている世代。熱いものが熱かった時代の役に近づけるのは大変だったと思うけど、一生懸命自分の中で火をたき、体を作って、ボクサーとしてのストイックさを見せてくれました。また、彼は心に固い芯みたいなものをいっぱい持っている方なので、その孤高さがジョーとマッチしました。氷のように孤独な少年がボクシングにすがっていく。ポジではなくネガとして、ジョー役を着地させましたね」
役作りで10kg減量した伊勢谷についても太鼓判を押す。「伊勢谷さんは山下さんよりももう1つ上の世代で、力石徹役をやることの恐ろしさを知っているので、彼はボクサーと俳優とがある種似通っていることを経験でわかっている世代。自分を追い込むことを楽しんでやっていたと思います」
特に、伊勢谷さんが見せた減量後の骨の浮き出た裸体には度肝を抜かれた。「エイリアンが腹から飛び出た後みたいでしたね。アバラ骨ってこんな位置まであるんだなあって思いながら見てました。でも、僕たちはそれを狙っていたわけだし。本当のボクサーなら、あの後本気で殴り合うわけで。それを考えると楽だよね、ってことを、みんなは言えないけど、僕は言える立場にあったので、どんどん言ってました(笑)。スタッフとの間を中和するのも僕の役目だと思っていたから」
香川の丹下段平も最高だ。特殊メイクで行くことを最後まで押し通したのは、彼自身だったという。「最初の登場時は笑うところです(笑)」と言った後で、段平役のこだわりを語った。「特殊メイク以外ありえないと思っていました。でも監督は、他のふたりが普通なのに、段平が100%特殊メイクっていうバランス感を気にしていて。ただ、僕の中では自信がありました。山下さんたちは体重を削って命懸けのことをするわけだから、こっちは100%の作り込みをしながらも、ボクシングを30年もやってきた経験で応えようと。俳優や人間としての味をプラスしたあの外見でどうしてもやりたかった。最終的にそれを受け入れてくれた監督には感謝しています。でも、役者って中身が真剣なら、どんなことをやっても人は感動してくれると思います。シザー・ハンズとか、ジェイソンとかもそう。ああいう外見の方がむしろ泣ける。『立つんだ、ジョー!』っていうセリフのシーンでは、助監督が泣いてましたからね」
最後に本作への思い入れを語ってもらった。「本作は僕のフィルモグラフィーに“ボクシング監修”として入るので特別な作品です(笑)。見どころは、“あした”の意味じゃないでしょうか。狂った今日があるからこそ、あしたが来る、というすごいメッセージがあるので。まあ、小難しいことは置いといて、ふたりが頑張った肉体を見るだけでも、1800円を払う価値はあります!」【MovieWalker/山崎伸子】