黒シャツ隊、ローマ式敬礼、ヒトラー…映画でも話題の“独裁者ムッソリーニ”をひも解くキーワード!
現代ドイツにもしヒトラーが蘇ったら…?という突飛な設定で大きな話題を集めた『帰ってきたヒトラー』(15)。その舞台をイタリアに移し、独裁者ムッソリーニを主人公とした『帰ってきたムッソリーニ』が、現在公開されている。
ムッソリーニと言えば、ヒトラーと同時代を生きた独裁者。しかしヒトラーと比べ、その名がタイトルにつく映画の数が少なかったり、日本人にとっては名前は知っているが…というあまりなじみのない存在だろう。しかし、本作にはそんなムッソリーニ関連のブラックジョークや歴史的経緯を用いたセリフが至るところに散りばめられている。ということで、ここでは知っていると映画もより楽しめる、彼をひも解くキーワードをチェックしていきたい。
その前に、本作のあらすじを確認。突如として命日の4月28日に、現代のローマに軍服姿で生き返ったムッソリーニ。売れない映像作家のカナレッティは、偶然その姿をカメラに収めたところから彼に接触し、一発逆転のドキュメンタリー映画を作ろうと撮影を行いながらイタリア全土を一緒に巡ることに。その様子を動画投稿サイトにあげると再生数はうなぎのぼりで、ムッソリーニはテレビ番組が作られるほどの人気を獲得。そしてカリスマ的な演説で人々の心を掴むかつての統帥は、再び国を征服しようと企んでいく…。
ベニート・ムッソリーニは、第一次世界大戦後から独裁政権を敷いたイタリアの政治家。1921年に国家ファシスト党を創設すると、22年にはイタリアの首相となり、ローマ帝国の復活を掲げイタリアを第二次世界大戦へ向かわせた。そして枢軸国の敗戦により失脚し、1945年に連合軍に支配されたパルチザンに拘束されて処刑され、その生涯を終えた。
映画ではそんな彼の死一つをとっても、いくつもの“ブラックな”ジョークとして織り込まれている。例えば、彼が現代に復活する時に頭から落ちてくるのだが、これは処刑後に足を縛られて頭を下にして吊るされていたことに由来。またミラノのロレート広場を通りかかった際に、ムッソリーニの体調が悪くなるのだが、実はそこは処刑後に彼が吊るされた場所だったり…といった具合だ。
さらに国家ファシスト党の民兵組織であった黒シャツ隊に絡めたセリフや、現在では美術館として公開されているトルロニア荘を生前借り受けていたことに交えたジョーク、ローマ式の敬礼、ヒトラーとの関係など、とにかく多数のムッソリーニに絡めた小ネタが差し込まれているのだ。
もちろんそういった細かな部分だけでなく、この作品がどのような問題を扱っているのかを理解する上でも、彼のしたことを知っておくことは役に立つはずだ。
文/トライワークス