18歳未満はお断り!“無修正”で公開された、日本が生んだ芸術「春画」の世界へようこそ
男女の色恋や交わりを鮮やかに、のびやかに表現した“春画”。日本が生んだ芸術であるにもかかわらず、これまで大規模な展覧会がほとんど行われておらず、実際に観たことがあるという人は少ないのではないだろうか。そんな春画を巡る事情を追ったのが、現在公開中の映画『春画と日本人』だ。
本作は、2015年に東京の私立博物館「永青文庫」にて行われた、日本初となる大規模な春画展の開催までの険しい道のりを追ったドキュメンタリー。ロンドンの大英博物館で大成功を収めた「春画展」は、そのお膝元である日本での巡回展が企画されるが、国内の公私立博物館20館に展示を断られてしまう…。
無修正の春画を書店で手に入れられる時代にもかかわらず、なぜ展示はダメなのか?映画は、春画展の開催に対する世の中の逆風やそれでも開催に向け尽力した人々の知られざる努力や苦労を描くことで、春画を問題視し、自主規制によってひた隠しにしてきた日本の忖度構造を浮き彫りにしていく。
また春画自体もぼかしやトリミングなしの“無修正”で観ることができる本作。葛飾北斎、喜多川歌麿、菱川師宣といった浮世絵師のほとんどが絵筆をとっていた事実や、浮世絵や版本をしのぐ水準を保ち、摺・彫の当時最高の技術が込められていたことなど、質の高い芸術としての魅力を味わえる。
そして明治時代になると、西洋的近代化を急ぐ政府によって徹底的に弾圧され、何万の春画、数千の版木が燃やされ、名品は海外に流出したという不遇の歴史、娘が嫁ぐ際に春画を持たせるという昭和初期まで続いた驚きの風習なども知ることができる。
春画のありのままの美しさ、ユーモアにも触れることができる貴重な機会となっている本作。18歳未満は入場禁止だが、それ以上の方はぜひ劇場に足を運んでみてほしい。
文/トライワークス