10年後の日本はこんな感じ?『AI崩壊』巨大セットに潜入、「人工知能を扱った映画の金字塔に」と入江悠監督

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10年後の日本はこんな感じ?『AI崩壊』巨大セットに潜入、「人工知能を扱った映画の金字塔に」と入江悠監督

大沢たかおが5年ぶりに映画主演を務め、賀来賢人、岩田剛典、広瀬アリス、松嶋菜々子、三浦友和ら豪華キャストが共演することで話題の『AI崩壊』(2020年1月31日公開)。今年1月、クランクアップまで1か月を残した折返し地点の撮影現場をMovie Walker編集部が訪れた。2018年12月22日から2月26日まで行われた撮影は、主演の大沢が「2030年の世界を探して、全国を回ってきた」と言うとおり、東北、名古屋、千葉、大阪、岡山など各地で敢行。名古屋の道路を封鎖して、何十台もの車を入れ、破壊するなどの大規模ロケも行ってきた。集中を切らさず、過酷な撮影に臨むキャストやスタッフの表情からは、作品への熱量と確かな手応えが伺えた。

帰国した桐生らが、サーバールームを案内されるシーンに立ち会った
帰国した桐生らが、サーバールームを案内されるシーンに立ち会った[c]2020「AI 崩壊」製作委員会

本作は『22年目の告白-私が殺人犯です-』(17)の入江悠監督がメガホンをとり、入江監督自らが書き上げたオリジナル脚本で展開。この物語の核となるのが、全国民の個人データと健康を管理する医療AI”のぞみ”だ。舞台となる2030年は医療AIが進化しており、電気・ガス・水道に続く第4のインフラとして生活に根付いているという設定。

この日の撮影は、そんなAIインフラの要である巨大サーバールームで行われた。“のぞみ”の開発者である桐生(大沢)と娘の心が久方振りに帰国し、新設されたサーバールームを訪れる冒頭シーン。その広さはもちろん、入り口のセキュリティ設備や水冷システムに驚きながら歩いて回るのだが、観客もまた、ものすごいスペックの設備に目を見張ることとなる。

白を基調とした、50メートル×25メートルにおよぶ巨大セット
白を基調とした、50メートル×25メートルにおよぶ巨大セット[c]2020「AI 崩壊」製作委員会

記者が実際に足を踏み入れると、とにかく広い!『22年目の告白』でも入江監督とタッグを組んだ北島プロデューサーが、劇中さながらに案内してくれた。「このサーバールームは、テロリスト対策で地下13階にあるという設定です。ちなみに現代のスタンダードは空冷ですが、映画の設定ではエネルギー効率のよい循環式の水冷方式を採用していて、大きいサーバーが大きな水槽に沈められている構造になっているんです」。自ら人工知能学会に入会して、専門家に取材を続けたという入江監督も、「作品の一番の魅力は”緻密さ”」と自負する。

中央奥に鎮座するのが、医療AI”のぞみ”のコアサーバーだ。美しい螺旋を描き、時々ぽうっ……と白く光る姿には、吸い込まれるような魅力がある。花のような、なんだか温かみのある造形だが、それもそのはず。このAIは桐生と、共同開発者でもあった亡き妻の望(松嶋)の思い出の海をイメージし、貝殻をモチーフにして作ったもの。

これが医療AI「のぞみ」のコアサーバー。接する人物の感情や状況に応じて、表情を変える
これが医療AI「のぞみ」のコアサーバー。接する人物の感情や状況に応じて、表情を変える[c]2020「AI 崩壊」製作委員会

「この医療AIを使えば、病気だった望は助かったけれど、国に認められず使えなかった。というよりも、彼らは使わないという選択をした。のちのAIの研究に支障をきたすだろうという研究者同士の考えで、死を受け入れた背景があるんです。『人間のルールを犯していいのか?』という問いに向き合うことは、この映画で描かれるテーマでもあります」。そう北島プロデューサーが話すとおり、亡き妻の名前をとったAI”のぞみ”が、本作の中心にあることがよくわかる。

そんななか、突如AIが暴走を始めたことから、検索履歴や趣味趣向、行動データや遺伝子情報、納税額などの情報をもとに「生きる価値がある人間」と「生きる価値がない人間」を選別。国民の殺戮を開始してしまう。見る間に街中が大混乱、開発者の桐生が容疑者にされたことから、息をのむような逃亡劇が展開されていく。

逃亡者となる桐生。大沢たかおの数々のアクションにも注目したい
逃亡者となる桐生。大沢たかおの数々のアクションにも注目したい[c]2020「AI 崩壊」製作委員会

近未来を舞台にしたパニック映画を愛する入江監督にとって、念願の作品となったという。「日本映画で近未来のSFをやるのは難しいことだと思うんですが、さらにそこにノンストップのクライムサスペンス要素も入ってくるので、脚本はスピード感にこだわりました」と言うとおり、現代社会に警鐘を鳴らす危機感とリアリティ、ぐいぐい引き込むパニック劇は監督ならではの演出が光る。『藁の楯』や『キングダム』でも見せた”アクション俳優”としての大沢の魅力も遺憾なく発揮されている。

撮影の合間に大沢に話を聞くと、「監督が日々台本を変えて、よりおもしろいものになるようにとみんなで話し合いながらやっています。自分がいままで参加した作品のなかで『こんな作品あるのかな?』と思うくらい」と充実の表情。巨大貨物船を貸し切った逃走シーンもあり、「船の中、ずっと手持ちカメラで撮影して。最近ではあまりないくらい過酷ではあるんだけど、みんなの気合が入っている作品です」とコメント。横でうなずく賀来賢人も「いいものにしたいと思います、楽しんでいってください!」と記者陣に笑顔を見せる。

「人工知能を扱った映画の金字塔になればいいな」という入江監督。東京五輪を控え、さらにAIに注目が集まる“2020年という現代だからこそ見るべき作品”とキャスト&スタッフが熱量を込めて作り上げた本作。「すぐそこにある未来」を目撃してほしい。

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