人間国宝の野村萬も尊敬する、中国トップ京劇俳優主演作が3D映画となって1週間限定上映!
「製作過程で難しかったことは?」と聞かれ、「舞台ならではの表現を映画ではどういう表現にした方がいいか、ということを考えるのが難しかった」と話す尚。舞台と映画の違いについては「両方とも魅力がある。舞台に立つのはマクロ的な物語を展示するという感じで、映画は絵コンテのような感じ。大きなスクリーンで俳優の表情を映しだし、その表情から心の世界を映しだすことができるんじゃないかと思います」と話した。
また、撮影を振り返って「舞台は2時間半しかないけど、映画では10時間撮影しっぱなしということもあるので、待ち時間によくみんなで会話をしました。そんなときよく話題になるのが、各国のおいしいものについて。もちろん日本の話にもなります。私が一番好きなのはやっぱり刺身です(笑)」と話し、会場を沸かせていた。
すると監督が「撮影当時、尚先生は膝の手術をされたばかりだったので、撮影現場には代役も用意していたのですが、途中で『休憩しましょう』『代役を使いましょう』と提案しても、最後までご自分で演じられ、監督の私の目から見ても『もうOKじゃないかな』と思えるシーンでも『いや、もう一度やりましょう』といつも言われるんです。そういう真面目な態度が、ほかの若い役者にもいい影響を与えました」と尚を絶賛。
MCのキクチウソツカナイ。が、「うちの山田菜々は日本でも人気のあるタレントで、最近中国語も勉強しているので、今度監督の映画に出演させていただけないでしょうか?」と大胆にも売り込むと、「すごく綺麗な方で、ぜひ主演していただきたい。尚先生から京劇の仕草や表情なども習ってください」とニコニコ。尚もノリノリな様子で「今度私と『覇王別姫』の主題歌を一緒に歌いましょう!」と提案するが、山田は「歌…」と一瞬絶句。しかし「歌は少し自信がないですが、やりたいのでよろしくお願いします!」と中国語を交え、深々と頭を下げていた。
さらに、尚の友人として人間国宝の野村萬が登壇。会場がわれんばかりの拍手に包まれるなか、「尊敬する偉大な尚先生と親しく交流させていただいていることを本当に光栄に思っています。先月一緒にお酒を飲んだときに舞台挨拶のお話を伺って『ぜひ伺いたい!』と申し上げ、本日参上いたしました」と、登壇することになったきっかけを明かす。
9年前の上海万博の時、「長寿を寿ぐ歌」を一緒に歌ったことがきっかけで交流がスタートしたという2人。続けて野村は「私たちがやっている能や狂言という芸能は奈良時代に中国から渡ってきた散楽という芸能が元になっている。ですから、中国は私たちの芸能の生みの親。現代にもその気持ちは繋がっていて、本当に尊敬しています」と、中国の芸能への敬意を表していた。
最後に尚が「今日はたくさんの方に来ていただいて本当に感謝いたします。今回の映画上映をきっかけに、よかったら上海にも足を運んで、舞台の方も体験してみてください」と呼びかけ、舞台挨拶は幕を閉じた。
取材・文/オチアイユキ