宮野真守、『HUMAN LOST 人間失格』の全裸シーンは「海外のお客さんも反応が良かった」
日本文学の金字塔である太宰治「人間失格」を、SFダークヒーローアクション映画に再構築した長編アニメーション『HUMAN LOST 人間失格』の初日舞台挨拶が、11月29日にTOHOシネマズ新宿で開催され、声優を務めた宮野真守、木崎文智監督、ストーリー原案と脚本を手掛けた冲方丁が登壇。宮野は「斬新な企画だなと思って参加させていただきました。こういう形でアニメーションを作ることにより、可能性がどんどん広がるなと思いました」と力強くアピールした。
本作の舞台は、医療の発達により、人々が120歳の寿命を保証される昭和111年の世界。薬物に溺れ、怠惰な暮らしを送る大庭葉藏(宮野真守)が体験する不思議な出来事が描かれる。
宮野は、「太宰先生の『人間失格』を読ませていただきましたが、本作とは世界観がガラリと違うけれど、人間関係のエッセンス、精神性を取り入れていくということでやりました。誰にも相談できない鬱屈とした悩みを大事にして演じようと思いました」と語った。
木崎監督も「太宰先生の原作から外れないようにキャラクターを作っていました。ラストだけ違うので、そこは観て確認していただけたらと」と言うが、冲方は最初にオファーをもらった時「すっとんきょうなことが出てきたな」と思ったそう。
冲方が「最初はSFにするにはどうしたらいいのかと話しまして。それで“人間全部失格”にしようと。そのなかでも特に失格した葉藏を書こうと思いました」と言うと、宮野は「大胆ですね」と笑いつつ「ありえなさそうな設定をドンと持ってくる。SFにするにはインパクトがありますね」と感心した。
大庭葉藏がダークヒーローに変身するシーンについて宮野は「変身の仕方がね。海外のお客さんも反応が良かったです。葉藏が全裸になりがち。突然ですよね」と笑う。
冲方が「太宰の原作なので、死がまとわりつくんです。そのぶん、葉藏がヒーローとして誕生する。それを生々しくやろうと思ったので、毎回全裸になるんです」と解説。
木崎監督は「だから、手間もお金もかかってるという」と苦笑いすると、冲方が「脱がすなと言われました(苦笑)。金が倍かかると」とうなずき、3人は爆笑した。
最後に、宮野が本作についてこうアピール。「海外でも、アニメーションが日本の文化として、これだけ求められているんだなと感じましたし、日本の文化やわびさびを注ぎ込むことで、伝えられることがたくさんあるなと思いました」としっかりと締めくくった。
※木崎文智の「崎」は「たつさき」が正式表記
取材・文/山崎 伸子