舞台ファンも魅了されるダンスシーンに楽曲…『キャッツ』映画版の3つの魅力とは?
1981年のロンドン初演以来、世界中で愛されているミュージカルの金字塔がいよいよ実写映画『キャッツ』(公開中)としてお目見えした。監督は映画『レ・ミゼラブル』(12)のトム・フーパ―、そして舞台「オペラ座の怪人」や「キャッツ」を手掛けた作曲家アンドリュー・ロイド=ウェバーをはじめとした豪華な制作陣が顔を揃えた。本作の公開を心待ちにしていたミュージカルファンも多いことだろう。今回は舞台とは違う、魅力あふれる映画版『キャッツ』の3つのポイントについて紹介したい。
一匹の子ネコ、ヴィクトリアの目線で描かれるわかりやすいストーリー展開
舞台版「キャッツ」は、24匹のネコによる歌とダンスで物語を紡いでいくが、映画版はそのうちの一匹であるヴィクトリアの目線でストーリーが展開される。ロンドンの片隅のゴミ捨て場に捨てられてしまった臆病な子ネコ・ヴィクトリアは、兄貴肌のネコ、ワイルドなネコ、お金持ちのネコなど、人間に頼らず生きている個性的な“ジェリクルキャッツ”に出会い、自分らしい生き方を見つけていく。
新しい人生を生きることが許される一匹のネコが選ばれる特別な舞踏会で、ジェリクルキャッツが歌い踊る様子を描きながら進む本作。舞台版は次から次へと登場するジェリクルキャッツが華麗なパフォーマンスで魅せていくが、映画版ではヴィクトリアの目線からその光景を映すことで、非常に物語が理解しやすい構成となっている。舞台を何度も観た人でも「そういうことだったのか」と新たな発見があるだろう。
名ダンサーたちが魅せる迫力あるダンスシーン
ヴィクトリアを演じている英国ロイヤルバレエ団のプリンシパルダンサー、フランチェスカ・ヘイワードをはじめとして、本作には様々なジャンルのダンサーたちが集まっている。舞台版は、ロンドンのゴミ捨て場をイメージしたユニークな舞台装置でネコたちが歌い踊るが、映画だからこそできるダイナミックな場面転換とカメラワークで、舞台とは違った迫力あるダンスが楽しめる。
舞台版と少し趣が異なるシーンとして注目してほしいのは、鉄道ネコ・スキンブルシャンクスを演じているスティーブン・マックレーが、華麗なタップシーンを見せる場面だ。観ている側もロンドンの街を闊歩しているようなワクワクとした気分にさせてくれる。
映画版のために作曲された新曲「Beautiful Ghosts」
本作のために、ボンバルリーナ役で出演もしているテイラー・スウィフトとアンドリュー・ロイド=ウェバーが、ヴィクトリアのための曲「Beautiful Ghosts(ビューティフル・ゴースト)」を共同で制作。ヴィクトリアが自身の心情を歌うシーンで披露されるが、それを陰から見守る、嫌われ者で孤独な娼婦ネコ、グリザベラ(名曲「メモリー」を歌うネコ)とのシーンは、物語が展開していくうえで大きなキーポントとなっている。エンディングでは、テイラー・スウィフト自身もこの楽曲を歌っているので、最後まで席を立たずに聴いてほしい。
舞台とは違う映画『キャッツ』の3つの魅力に触れてきたが、基本的には舞台を尊重して作られた作品であることに間違いない。そういった意味で、長年のキャッツファンも魅了される楽しいミュージカル映画になっていると言っていいだろう。
文/咲田真菜