新田真剣佑&北村匠海、認め合う男たち「日に日に好きになっていく…」
これまで何度も作品を共にし、プライベートの仲よしぶりも有名な新田真剣佑と北村匠海が、映画『サヨナラまでの30分』(1月24日公開)で“2人で1つの体を共有する”という特別な役どころで4度目の共演を果たした。インタビューを試みると「共演すると聞いて、『またか!』と思った」と2人で笑いながらも、「匠海と一緒だと安心感がすごい」(新田)、「この作品はまっけんとじゃなければ成立しなかった」(北村)とお互いへの愛と並々ならぬ信頼感があふれだす。歌声も披露した本作での撮影を振り返ってもらうとともに、仲よくなったきっかけを語り合ってもらった。
本作は、人づきあいが苦手な颯太(北村)が、1年前に亡くなったバンドのボーカルのアキ(新田)が遺したカセットテープを偶然に拾ったことから始まる青春音楽ラブストーリー。アキのカセットテープを颯太が再生する30分だけ2人が入れ替わり、1つの体を共有していくことになる。“入れ替わり”という不思議な現象を軸に、いまを生きる尊さや、仲間や恋人を想う気持ちが浮き彫りとなる。
「匠海は本当にいい表情をする」(新田)
これまでドラマ「仰げば尊し」、映画『OVER DRIVE』(18)、『十二人の死にたい子どもたち』(19)と3作品で共演し、今回4度目のタッグにしてダブル主演を果たした新田と北村。
「最多共演!」と明かした北村は、「初共演の『仰げば尊し』ではクラスメイト、『OVER DRIVE』ではライバル同士でしたが、どちらもまっけんの役どころから突き動かされるような関係性で。僕はまっけんの背中を見ているのがすごく気持ちいいんです」とニッコリ。「本作での颯太も、アキから前に進む力をもらう。まっけんの背中をまた見られると思うと、すごくうれしかった」と新田への特別な感情を吐露。
新田は「本作のポスターの表情もそうだけれど、匠海はどんな場面でもすごくいい表情をする。『OVER DRIVE』もすごかったなあ。匠海がいると、とにかく安心感がすごいんです」と信頼感を語る。すると北村は「ありがたい」と頬を緩めながら、「それはお互いにそうなんです。きっと周囲の方々も僕たちのそういった雰囲気を感じ取ってくださっているからこそ、共演が多いのかなと思います」と分析。新田は「2人とも『OVER DRIVE』の時とは、キャラクターもまったく違うからおもしろいよね」、北村が「まっけんは特に違うよね!あの時はお互いに鍛えていたから、体も倍以上に大きいし」と続くなど、気の置けない間柄ならではのトークを展開する。
「まっけんのレコーディング姿を見て“職人肌”だなと感じた」(北村)
本作で大きな見どころとなるのが、アキと颯太の歌唱シーンだ。歌声からもキャラクターの個性や心情が伝わるなど、新田と北村の豊かな表現力を堪能できる。
北村は新田の歌声を聴き、「抜群にうまい」と惚れ惚れ。「まっけんの歌声ではなく、確実にアキの歌声になっていました。過去の人間であることや、10代であることが、しっかりと歌声に込められていた。レコーディングをしていても、まっけんは『ここはもう一度やりたい』とお願いしていたり、とことん突き詰める職人肌を感じました」。
新田は「アキはまだデビュー前でプロではないという状態なので、ものすごくうまいというわけじゃない。そういったキャラクターの個性を考えていったんですが、まだ本編の撮影に入る前にレコーディングをしたので、アキを作り上げていくのがすごく難しくて。いろいろと考えていました」と述懐。北村の歌声については「匠海の歌声って、スパーン!と飛ぶんだよね。すごいなと思った」と明かし、「歌声を聴いてもいいなと思うし、(北村のことが)日に日に好きになっています(笑)」と愛情を傾けていた。
「僕らは、似たもの同士だから」(新田)
インタビュー中も笑顔が絶えず、一緒にいるのが楽しくて仕方がないといった様子だが、「仲よくなれると思ったきっかけ」を聞いてみると、2人ともが、互いの芝居を見た時と回答した。
北村は「『仰げば尊し』2話での僕の演技を、まっけんがすごく褒めてくれて。さらに3話ではまっけんの芝居に驚いたんです。芝居になった瞬間にバン!と熱いものが出てくるようで、段取りから本番までずっと、まっけんからものすごいエネルギーを感じた。“芝居がすばらしい”という信頼感から、友情が始まったような気がしています」と振り返り、「いまでは、話さなくても一緒にいられる感じ」とプライベートでも落ち着ける存在だという。
新田が「仲よくなれないと思うところがない」と微笑み、「僕と匠海は似た者同士だからね」と話すと、北村も「そうなんだよね。11月生まれのB型!」と呼応し、新田が「変人しかいない!」と2人で大笑い。
さらに新田は、こう続ける。「人として尊敬できるのはもちろんだけれど、役者として尊敬できるということが一番大きいです。匠海は、僕には絶対にできないような芝居をやる。スクリーンを見ていて、『やっぱりすごいなあ』と思わされることがたくさんある人。それが北村匠海!大好きです。僕、匠海のファンと語り合えると思うよ。一人でも匠海の作品を観に行くし」と熱弁して、北村も思わず照れ笑い。「ファンの子から、イベントでまっけんが僕のことを話していたとコメントをもらうこともあって。どこでも話しているんだな!」と突っ込むと、新田は「そうなんです!どこでも匠海の話をしちゃう」とニコニコ笑顔が止まらない。
今回は言わば、“一体化する役どころ”で共演したわけだが、新たに発見したことはあるだろうか?すると新田は「ないです!匠海のことは全部知り尽くしています。ホクロの位置も全部知っているからね」と自信満々の表情を浮かべ、北村は「キラーワードがどんどん出てくるな」とタジタジになりながら、「今回、ついに裸の付き合いをしましたからね。これはトップシークレットですけれど(笑)」と撮影秘話を教えてくれた。
「17歳での武道館ライブと『仰げば尊し』での経験は忘れたくない」(北村)
“大切な記憶”がひとつのテーマとなる本作。2人にとっての、「いまでも力になっている」「これは消したくない」と思うような“大切な記憶”は?
新田は「『仰げば尊し』での経験はすごく大きい」と告白する。「匠海とはもちろん、親友と思える人とたくさん出会えた。そして寺尾聰さんというすばらしい役者さんとも出会えた。(村上)虹郎や(伊藤)健太郎もいたし、とにかくみんな仲がよくて、現場にいるのがものすごく楽しかった。ものづくりって楽しいなと感じることができました」。北村も「『仰げば尊し』から、またこうやって一緒に作品ができるということがすごくうれしいよね。あの作品で共演した仲間は、『お互いの芝居が好きだ』と言い合える関係になれた。同世代にこういう仲間がいることは、ものすごく力になること」と共感。新田も「僕、役者がほかの人の芝居を見て『すばらしかった』と声をかける姿って、すごく好きで。そうやって言える先輩を見ていても、かっこいいなと思うんです」と熱っぽく語る。
北村は「『仰げば尊し』での経験はもちろん大きい」とうなずきつつ、「(ダンスロックバンドDISH//のメンバーとして)17歳で初めて武道館ライブをしたこと」も大切な記憶だと明かす。「武道館という夢が叶ってから、その後の1年がすごく苦しかったんです。ある意味、夢を失って露頭に迷ってしまった感じ。後輩もどんどん出てくるし、『これからどうしたらいいんだろう』と右往左往していたと思います。でもそこで迷ったからこそ、バンドとしてまた前に進むことができた。改めて足元を見つめることができたんです」。
たくさんの出会いを重ねながら、無限の可能性に向かって挑戦し続けている2人。新たな1年を迎え、北村は「オリンピックが開催されて、僕らのような若い世代が大活躍する1年になると思います。そういった世界と闘っている方々に負けないように、僕もいい作品を残していきたいと思っています」と決意表明。新田は「百折不撓」とのモットーを掲げ、「100回失敗しても諦めないという意味なんですが、常に諦めずに立ち向かっていきたい」と情熱を燃やしていた。
取材・文/成田 おり枝