アカデミー賞直前!『1917 命をかけた伝令』ロジャー・ディーキンスの撮影技術の舞台裏
第77回ゴールデン・グローブ賞で作品賞(ドラマ部門)と監督賞を受賞し、第73回英国アカデミー賞では最多7冠を獲得。いよいよ明日授賞式が行われる第92回アカデミー賞では10部門にノミネートされ、作品賞有力との呼び声も高い『1917 命をかけた伝令』が2月14日(金)に日本公開を迎える。このたび本作から、圧巻の映像を生みだす撮影風景を収めた特別映像が解禁された。
『アメリカン・ビューティー』(99)で第72回アカデミー賞を受賞し、その後「007」シリーズなどのヒット作を手掛けてきたサム・メンデス監督がメガホンをとった本作。第一次世界大戦真っただ中の1917年、若きイギリス人兵士のスコフィールドとブレイクに、最前線にいる1600人の味方に作戦中止の命令を届ける重要な任務が与えられる。もし伝令が間に合わなければイギリスは敗北することになるという状況のなか、2人は危険な罠が張り巡らされた戦場を駆け抜けていくことに…。
このたび解禁された特別映像では、本作の臨場感を増幅させる画期的な“ワンカット風映像”の舞台裏が映しだされていく。すべて屋外での撮影ということもあり、移動する歩数やセリフを言い終わる秒数から、カメラの動きや天候まで様々な要素を計算した上で撮影に臨んだという本作。そのなかでもスタッフ陣がもっとも苦労を強いられたのは“照明を使えない”ということだったとか。
撮影監督を務めたロジャー・ディーキンスは「今回のように舞台が屋外の作品では、天候と自然光の状態がカギとなる」と明かす。被写体となるキャストが塹壕のなかを走り抜け、カメラが360度方向転換することもあるため照明を使うことができず、またシーンとシーンを自然につなぎ合わせるために曇り空での撮影が必須だったとのこと。
そのため周囲を照らす人工の照明は、照明弾の明かりのみ。もちろん何秒の照明弾が必要か計算され、事前に模型を使って影の動きを確認。そして、本番ではすべてのキャスト・スタッフが計算通りに動くことが必要とされたのだとか。敵地を走り抜ける若き伝令兵に迫る脅威や、曲がり角の先に潜む恐怖を見事に照明弾のみで表現した脅威的な映像に、メンデス監督も「照明で物語を雄弁に語ることができるのがロジャー・ディーキンスだ」と称賛の言葉を贈っている。
また今回の特別映像に先駆け、スコフィールドとブレイクがある農家の建物の周りを散策する約3分半の本編映像も解禁されている。この映像からも徹底的なこだわりの一端を垣間見ることができるだろう。ディーキンスは「観客にはワンカットの映像に気を取られず、作品を観て欲しい。観客がストーリーに没頭して登場人物と一緒に体験するために作った映像だ」と、このうえない没入感と臨場感にあふれた映像への強い自信をあらわに。
『ブレードランナー2049』(17)で14度目のノミネートにして悲願のアカデミー撮影賞を受賞し、ついに“無冠の帝王”の称号を返上したディーキンス。本作で彼が2度目の栄冠を獲得するのか、そして本作は2019年の頂点に輝く1本となるのか。授賞式のゆくえに注目するとともに、映画撮影の限界を突破した異次元の没入感を劇場の大スクリーンで体験してほしい。
文/久保田 和馬