池松壮亮、5年ぶりのキネマ旬報ベスト・テン授賞式で熱いスピーチ!「僕だけの力では到底及ばない場所」
昨年創刊から100年を迎えた映画雑誌「キネマ旬報」のキネマ旬報社が主催する、アメリカのアカデミー賞よりも長い歴史を持つ映画賞「第93回キネマ旬報ベスト・テン」の第1位映画鑑賞会と表彰式が11日、東京・文京シビックホールで開催。2019年の国内の映画界を賑わせた作品の出演者や監督、関係者らが登壇した。
日本映画作品賞に輝いた荒井晴彦監督の『火口のふたり』で主演女優賞を受賞した瀧内公美は初のキネマ旬報ベスト・テン受賞に「この賞をいただけることが本当に光栄です」と緊張の面持ちで喜びを語ると、「この作品は、いままでお世話になっていた事務所を退所してフリーになった時に声をかけていただいた作品。これからどうして行こうかなと思っていた時にこういう作品をいただけたので、やってみようと思って携わりました」と本作との出会いを振り返る。
そして「お相手役をしてくださった柄本佑さんがいたから今日があるんだと思っています」と柄本をはじめ荒井監督やスタッフへの感謝を述べると、登壇していた荒井監督からは「ベッドの上でのシーン以外は放し飼いでした」と太鼓判が。そんな荒井監督との仕事について「クリエイティブな話ができる人だったのでやりやすかったです」と笑顔で語る瀧内は、主演最新作『裏アカ』(6月12日公開)の公開も控えており、今後の活躍に期待が高まるばかりだ。
『宮本から君へ』で主演男優賞を受賞した池松壮亮は、『ぼくたちの家族』(14)などで第88回助演男優賞を受賞して以来のキネマ旬報ベスト・テン。「言いたいことはいろいろあるんですけど、うまく言葉になっておりません」と語る池松は、ドラマ版から様々な壁に何度もぶち当たってきたことを振り返り「現場にたくさんの宮本がいて、そのバトンをつないでもらった先にこの場所があると思うと、僕だけの力では到底及ばない場所だと思います」と関係者への感謝を述べる。
さらに「宮本というキャラクターが、正しくないものに対して声をあげつづける、血だらけになりながら戦う男だから、みんなが鼓舞されてなんとかやり遂げることができたのかなと思います。みんなで戦った日々の勲章としてこの賞をもらうのとともに、池松から宮本へ、この重みのある賞を捧げることができたらなと思います」と力説。そして「2020年代に入りましたけど、まだ問題はいろんなところで山積み。もっともっと映画を先に進めるために、観てくださる方の日々の生活を少しでも豊かに、小さな光を与えられるように、日々精進していきたいと思います」と続けた。
『大阪物語』(99)で第73回新人女優賞を受賞して以来、実に20年ぶりのキネマ旬報ベスト・テンとなった池脇千鶴は『半世界』で助演女優賞を受賞。「小さな映画で、私の出番もさほど多くないけれど評価されて。映画の神様は見てくださっていたのかなと思います」と喜びを語ると「もらってうれしいものなので、次は20年も開かずにいただけたら励みになるかな」と笑顔を見せた。
また2019年には6本の実写映画に出演し周防正行監督の『カツベン!』で初主演も務めた成田凌は『愛がなんだ』や『さよならくちびる』など複数の出演作で助演男優賞を受賞。「毎日現場に行くたびに、力が足りないと思うのと同時に、共演者の方からたくさん学ぶことばかりだったので、僕がいただいていいのかなと思った」と謙虚にスピーチ。そして助演男優賞の選評でダントツで1位になったことに喜びつつも、主演男優賞では池松に大差をつけられた2位だったことに触れ「悔しいという気持ち。やっぱ足らないんだなと思いました」とさらなる上を目指すことを誓っていた。
そして特別賞を受賞したのは昨年10月7日に亡くなった、イラストレーターや映画監督など様々な分野で活躍した和田誠。登壇した和田の妻で料理愛好家の平野レミは「場違いね!こういうところは初めてで、どういう風にしていいのかさっぱりわからない!」と持ち前の明るさで会場を沸かせると、「夫は映画が大好きだったから、私にとって映画はライバル!もうちょっと長く生きて、こういう賞をいただけてれば最高だったと思うんですが。お父さんいただきましたよ!」と、天国の夫に呼びかける。そして「あんまり優しい人と結婚しちゃったから後がつらい。いま悲しくて悲しくて本当につらい」と、和田が亡くなってからの4か月を目を潤ませながら振り返った。
そんな和田がメガホンをとった『麻雀放浪記』(82)にリスペクトを捧げた『麻雀放浪記2020』などで日本映画監督賞に輝いた白石和彌は「(平野レミに)怒られやしないか冷や冷やしました」と笑いながら、「キネマ旬報の賞は縁遠いなとずっと思ってたんですけど、こうやっていただけて本当にうれしいです」とコメント。そしてこの前日に行われたアカデミー賞について「歴史が変わる瞬間で、すごく悔しさも覚えた。ツイッターで日本映画は韓国映画に比べてダメだと書かれていたので責任を感じましたが、やれることをやって、必ずやいつか、満足のいく映画を届けられるように今後も頑張っていきたい」と意気込みを語った。