千葉雄大、『スマホ』続編で存在感を発揮。「ミステリアスで売っていきたい」30代の展望は?
大ヒットしたミステリー映画の続編『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』(2月21日公開)で、前作の主演、北川景子に代わって主演を務めた千葉雄大。前作から続投したのは、心に闇を抱える刑事、加賀谷学役で、本作では彼と彼の恋人が、姿の見えない連続殺人鬼の魔の手に落ちていく。千葉を直撃し、恋人役の白石麻衣や、宿敵にして今回、捜査の協力者となる殺人鬼、浦野役の成田凌との撮影秘話を聞いた。
長い黒髪の女性ばかりを狙った連続殺人事件は、加賀谷刑事が犯人の浦野を逮捕したことで終息したかに思えたが、同じ殺人現場から新たな遺体が発見される。捜査が難航を極めるなか、加賀谷は、最終手段として、“囚われの殺人鬼”である浦野に面会。浦野の口から、事件のキーマンといえそうな謎の人物“M”について聞かされた加賀谷は、浦野と組んで捜査をすることに。そんななか、恋人の美乃里(白石麻衣)も、犯人のターゲットとなっていく…。
原作は、志駕晃の同名小説で、「リング」シリーズの中田秀夫監督が再びメガホンをとった。
「ラブシーンは、僕のほうが想像以上に照れてしまいました」
千葉は、演じた加賀谷のキャラクターについて「いわゆるハードボイルドな作品で、真ん中に立つような性格の人物ではない」としながら「だからこそ、いまの時代を切り取ったような作品になっているので、そこをおもしろがって観てほしい」とアピールする。
恋人の美乃里から、「この先、どうするの?」と結婚を迫られても煮え切らない加賀谷については「女性陣から『ハッキリしろよ』という感想を多くいただくのは事実です」と苦笑い。「僕的には、してやったりなのですが、それは台本にそう書いてあるからなのか、僕が演じたからなのかはわからないです」。
もしも千葉自身が、恋人からプロポーズを促されたとしたら、どうするのか?と聞くと、「経験がないのでわからないのですが、僕ならハッキリさせるとは思います」と頼もしい発言が。「僕自身は、自分がしっかりと自立してから結婚を、といった想いはもうなくなっているので。そんな機会がもし来たら『ありがとうございます』と言います。でも、周りのカップルに聞くと『女性のほうから詰めていかないと、男性はなにもしない』という話を、何組か聞きました」。
これまで数多くのラブストーリーやラブコメディを演じてきた千葉。今回も白石とのラブシーンがたくさんあるが、「ミステリーだからといって、恋愛パートは手加減することなく、胸キュン映画としてもご覧いただけたらと考えていたんですが、僕のほうが想像以上に照れてしまいました」と笑う。
さらに「スマホの中にある2人の写真を撮るために、いろいろなところでロケをしました。最初はカメラマンさんが撮ってくれていたけど、僕が白石さんを撮ったものもあります。白石さんに『ここは可愛い感じでお願いします』というふうに、写真のオーダーをする機会なんて普通はないので、けっこう貴重な経験でした」。
「成田凌くんは役者として、自分とは違うものをたくさん持っています」
成田が演じる殺人鬼の浦野と加賀谷は、同じようなトラウマを抱えた表裏一体の存在とも受け取れる。「事件を解決するにあたり、加賀谷はやむを得ず浦野と向き合わなければいけなくなりますが、それは同時に、自分自身とも向き合うことにもなる。実際、浦野の言葉1つ1つに動かされてしまう自分がいたと思います」。
浦野と対峙するシーンでは、飄々と浦野を演じる成田に助けられた部分も多かったそうだ。
「僕が役に入り込みすぎていると、成田くんから『バーチー、緊張してるの?』と言われ、イラッとすると共に安心感もあって、すごくありがたかったです(笑)。成田くんは役者として、自分とは違うものをたくさん持っているので、一緒にやっていて刺激的でした。実際、加賀谷として、浦野に少し同情してしまうようなシーンもあったかなと。とにかく成田くんの芝居はすてきだったし、この作品は成田くんの映画だとも思っています」。
「30代は、仕事面では貪欲に挑戦しつつ、自分というものをもう少し大事にしたい」
今年で30歳になる千葉。舞台挨拶や記者会見では、ウィットに富んだ発言で常に爪痕を残してきた印象がある。実写映画『ピーターラビット』(18)のインタビュー時には「野性的な魅力を出していきたい」と発言していたが、千葉に言わせると「動物ものの映画だったので、付け焼き刃で言ってしまいましたが、最近はもっとミステリアスで売っていきたい」とのこと。「おもしろいことを言うと期待された挙げ句『大したことないね』と思われたら嫌なので、いまはハードルをいかに下げられるかを意識しています」とおちゃめに言うが、本音はこうだ。
「例えば、その場を見渡した時、人生の先輩に当たるカメラマンさんやスタッフさんが、僕の発言で笑ってくれたりすると、ああ、良かったと思います。強面の方の眉間のしわをどうにかして笑いじわに変えたい、といつも考えてしまいます。できないことのほうが多いのですが(笑)」。
ずっと、カワイイ路線で人気を博してきた千葉だが、そういったサービス精神も相まって、近年は自分をいじる自虐トークで場を笑いに包むことも多い。「でも、最近は調子に乗りすぎて、純粋にかわいいリアクションがなかなかできなくなってきたので、反省しています。この前も、顔が動きすぎだと注意されてしまったので、ここらへんで初心に戻ろうかなと(苦笑)」。
ずっと第一線を走ってきた千葉は、近年、仕事に対して肩の力が抜けてきたのを実感している。「それがいいのか悪いのかはわからないけど、昔よりは柔軟になってきたかなと。それは他人の評価に対してもそうです。僕は、自分が上手く演じられたと思ったこともなければ、自分の作品を観ること自体があまり得意じゃないし、褒められるのも苦手です。でも、客観的に自分の作品を観た人がかけてくれる言葉は、あながち間違っていないと思うので、最近はそういう人の言葉も信じられるようになりました」。
では、千葉はどんな30代を迎えたいのだろうか。「仕事面では、まだやったことのない役や分野があるので、そういうものには貪欲に挑戦していきたい。また、プライベートな面も含め、自分というものをもう少し大事にしたいとすごく思っています。年を取ってからできることはたくさんあるけど、その時に見るのと若いうちに見るのとでは、同じ景色でもきっと違うと思うので。海外へも行きたいし、興味のあることはどんどんやっていきたいです」。
取材・文/山崎 伸子