MCU出演も控える「GOT」のキット・ハリトンが『ジョン・F・ドノヴァン』で美しきスター性を発揮…
『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』(公開中)は、19歳で映画監督として衝撃的なデビューを果たし、『Mommy/マミー』(14)でカンヌ国際映画祭審査員賞、『たかが世界の終わり』(16)で同映画祭グランプリに輝いたグザヴィエ・ドランの初の英語作品だ。彼が8歳の頃にレオナルド・ディカプリオにファンレターを書いた思い出をヒントに、人気スターと少年の間で交わされた文通を軸とした物語が描かれる。
本作のキーパーソンで、人気俳優のジョン・F・ドノヴァンを演じるのは、大ヒットドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」シリーズのジョン・スノウ役でおなじみのキット・ハリントン。誇り高き孤高の戦士から一転、本作では憂いを帯びた美しき人気スターを体現するハリトンの魅力に迫りたい。
人気スターと少年が交わした手紙を軸にそれぞれの人生が描かれる
2006年のニューヨーク、心から敬愛するジョン・F・ドノヴァンの死を伝えるニュースを、11歳の少年ルパート・ターナー(ジェイコブ・トレンブレイ)は呆然と立ち尽くして見つめていた。ドノヴァンの死から10年後、大人になり俳優として活躍しているルパート(ベン・シュネッツァー)が、ある著名な記者の取材を受け、ドノヴァンとの文通について当時を回顧しながら物語は進む。
ドノヴァンとルパート、それぞれの人生が交互に描写され、孤独や苦悩が浮き彫りにされていく過程で、二人に多くの共通点があることに気づく。絶大な人気を誇るドノヴァンがなぜ29歳の若さで亡くなってしまったのか?彼が最後にルパートへ宛てた手紙では、一体何が語られていたのだろうか…?衝撃的な死の真相がしだいに明かされていく。
MCU出演も控える旬な男、キット・ハリトン!
ドノヴァンを演じるハリトンも役に負けず劣らずの大スターだ。1986年英国ロンドンで生まれた彼は、舞台「ウォー・ホース 〜戦火の馬〜」などで経験を積んだ後、11年から放送スタートした「ゲーム・オブ・スローンズ」で主要キャラクターのジョン・スノウ役に抜擢されて世界的な人気を獲得。同作品は19年放送の最終第8シーズンまで放送され、リーダーとして覚醒していくジョンを魅力たっぷりに演じきった。
このほか映画では、『ポンペイ』(14)や『ブリムストーン』(16)などにも出演。さらに、『アベンジャーズ』シリーズなどのマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の最新作『ジ・エターナルズ(原題)』(11月6日全米公開予定)のキャストにも名を連ね、人間の男性デーン・ウィットマンとして登場するなど、今後の活躍への期待も大きい。
ドノヴァン役で魅せる憂いを帯びた表情が美しい…
『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』でのハリントンは、順風満帆な生活を送っているように見えるが、家族との複雑な関係や自身のセクシュアリティに悩むドノヴァンを丁寧な演技で表現。キラキラと輝くスターのオーラをまといながら、憂いのある表情を見せるハリントンがとにかく美しい。特に物語終盤での、絶望とも諦めともとれる悲しげな表情が印象に残る。
本作は、ドノヴァンとルパートの物語が中心となるが、ドラン監督が一貫して描いてきた「母と息子」の関係も盛り込まれており、ルパートの母にナタリー・ポートマン、ジョンの母親にスーザン・サランドンという贅沢なキャスティングで楽しめる。途中で何とも言えない苦しい気持ちになる場面もあるが、エンディングでは一筋の光が見え、すがすがしい気持ちになれる作品だ。
文/咲田真菜