カンヌ国際映画祭も延期を決定…オンラインでのバーチャル映画マーケットを模索中
世界中に拡散する新型コロナウイルスの影響により、毎年5月に行われているカンヌ国際映画祭も開催延期が発表されている。6月末か7月頭の開催を模索しているとのことだが、現時点での確実性はない。フランスでは3月初めより不要不急の外出禁止令が出ており、4月に予定されていたMIPカンヌ(テレビ番組の見本市)も中止となっていた。3月にテキサス州オースティンで行われる予定だったSXSWに続き、4月初旬のシネマコン(ラスベガス)、4月中旬のトライベッカ映画祭(ニューヨーク)、4月最終週に開催予定だったNetflixによるコメディ・フェスティバル「Netflix Is A Joke Fest」(ロサンゼルス)も中止を発表している。
現在、アメリカではカリフォルニア州、ニューヨーク州、そしてシカゴがあるイリノイ州でも自宅待機令が出ている。そのほかの地域でも学校休校と不要不急の外出を禁じ、WFH(在宅勤務を意味するWork From Homeの略)が推奨され、不特定多数が集まるイベントは中止もしくは延期になっている。全米に網羅する映画館チェーンのAMCやCinemarkも長引けば今後12週間映画館を閉館すると発表した。
そんななか、映画ビジネスの場をオンラインに移そうという動きも出ている。ハリウッドのコンテンツ・ビジネスの中核にいる大手エージェント会社が主導し、オンラインで映画マーケットを行う計画がある。タレントや監督、脚本家、プロデューサーのエージェント(代理人)を務めるこれらの会社は、彼らと各スタジオや制作会社と繋ぐ役目を担っている。そこに英米のセールス・エージェントが参加し、今後作られる映画や企画を販売する。
オンライン・マーケットでは映画の試写や企画のプレゼンをオンラインで行い、ZoomやGoogleハングアウトといったカンファレンス・ソフトを使い商談を行う仲介をする。カンヌやベルリンといった大きな映画祭にはマーケットと呼ばれる見本市が併設されていて、映画祭を訪れる映画関係者の多くにとって、コンペティション部門やレッドカーペットといった華やかな場所ではなく映画や企画を売買するマーケットが主戦場だ。もしこのオンライン・マーケットがうまく機能すれば、映画祭の存在意義が変わってくるかもしれない。同様に、5月の映画祭延期を発表したカンヌ国際映画祭併設のマーケットもオンラインでのバーチャル映画マーケットを模索中だという。配信映画の台頭に難色を示し続けているカンヌ国際映画祭は、数年前からNetflixやAmazonスタジオなどによる配信事業者による作品のコンペティション参加を禁じている。不可抗力とはいえ、そのカンヌ映画祭が開催を危ぶまれ、マーケットをオンライン化し映画の売買を行うというのは皮肉なことだ。
文/平井伊都子