アーティスト、Aimerが明かす『Fate』との歩み…「桜の人間らしさにどうしようもなく惹かれてしまう」
聞く人の解釈に委ねたい「春はゆく」の歌声に込めた思い
HFで3曲すべての主題歌で作詞作曲を務めた梶浦由記。どの曲も桜の心情に寄り添っている印象がとても強く、彼女の持つ憂いや闇が曲の中に込められているようだ。しかし、これらの楽曲に対し、Aimerは「無理せず感情を寄せて歌うことができる」と語る。
(第一章と第二章の主題歌)「花の唄」「I beg you」では、HFの物語に合わせて、桜の欲深さを演出するために、“粘度を帯びた歌い方”を意識しているという。だが、三章の主題歌「春はゆく」では、“とにかくフラットに歌うこと”を意識していた。「聴く人の解釈に委ねたい」という思いがあったからだ。
「梶浦さんから『春はゆく』についてお伺いした時に、桜は何も変わっていない、と言われました。それがすごく印象に残っています。この曲は、受け止め方によっていろんな解釈ができます。桜の持つエゴが薄くなっているようにも、変わらず物凄く欲深さが根差しているようにも聴こえる。なので、歌う時、どちらかの感情に寄ってしまうと、解釈の幅が狭くなるのではと考えたんです。否が応でもボーカルが立つような曲を、桜の弱さと強さが表現された歌詞を、梶浦さんが作ってくださった。その中で、私ができることは、丁寧に、優しく表現して歌うことだな、って」
終わりを迎えることへの“寂しさ”、そして“喜び”
Aimerは「春はゆく」のレコーディング前に、HFのアフレコへ足を運んでいた。彼女にとって人生初のアフレコ現場だ。「ものすごく緊張した」と語ると同時に、声優陣の演技を目の当たりにし「勝手に涙が出るほど感動して、作品へのボルテージが一気に上がった。すごく燃えました」と振り返る。「声優のみなさんから頑張ってください、と言われて。モノ作りをする人間として、作品づくりに携わる人たちをとても尊敬しています。特にHFは本当にプロフェッショナルな方たちの汗と涙の結晶だと思っていて。プレッシャーも強く感じていたのですが、すばらしい作品の歌を任されていることを噛みしめながら歌いました」
約3年、HFと関わり続けたAimerは、作品を終えることへ寂しさを募らせた。そして、HFとかかわれたことへのうれしさを胸に刻み、最後には「春はゆく」への思いを語ってくれた。「HFからファンになってくださる方もいましたし、毎回すごくワクワクしながら関わらせていただいたので、いまは寂しい気持ちです。でも、HFにかかわることができて、うれしかった。そして、思い入れのあるHFの最後を飾る曲が『春はゆく』で良かったと思っています。本当にすばらしい、最終章にふさわしい曲を、梶浦さんが私の声に託して作ってくださいました。最後があの曲でよかった、と少しでも好意的に感じてくれる人がいたら、とても幸せです」
取材・文/阿部裕華
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