初の女性指揮官として南北戦争を戦った!奴隷解放の英雄“ハリエット・タブマン”を知っているか?

コラム

初の女性指揮官として南北戦争を戦った!奴隷解放の英雄“ハリエット・タブマン”を知っているか?

アメリカの新ドル紙幣の肖像に、黒人女性が採用されたことをご存知だろうか?アフリカ系アメリカ人として史上初となるその人物の名は、ハリエット・タブマン。奴隷解放に尽力した英雄として、アメリカではいまも大きな支持を集めている。そんな彼女の激動の人生を描く映画が『ハリエット』(6月5日公開)だ。

奴隷解放の英雄“ハリエット・タブマン”の戦いを描く『ハリエット』
奴隷解放の英雄“ハリエット・タブマン”の戦いを描く『ハリエット』[c]Universal Pictures

物語は、南北戦争前の1849年、メリーランド州の農場から始まる。法的に奴隷ではない「自由黒人」という地位もあった時代だが、主人公ミンティ(シンシア・エリヴォ)は奴隷として労働を強いられていた。ある日、借金苦に迫られた農場主が彼女を売りに出そうとする。売り飛ばされれば二度と家族には会えない。そして、このまま農場にいても未来はないと悟ったミンティは、自由を夢見て脱走を決意。奴隷制が廃止されたペンシルベニア州を目指して旅立つ。追手が迫るなか、たった一人で…。

奴隷解放運動家、そして軍の指揮官としても活躍!

史実におけるミンティは、奴隷時代に自由黒人のジョン・タブマンと結婚し、ハリエット・タブマンと改名。脱出を渋る夫を残して自由の身となった彼女は、その生涯で800人以上の奴隷を解放したと言われている。

1850年からの10年間で、彼女自身も助けられた奴隷解放の組織”地下鉄道”の車掌として、北部と南部の往復を十数回繰り返し、70人以上の奴隷たちを誰一人捕まることなく解放したという。さらにハリエットは、1861年に勃発した南北戦争で、アメリカ史上初の女性指揮官として大勢の黒人兵を率いて戦い、750人もの奴隷解放に努めている。後年は、黒人と女性の権利を訴える活動に尽力。彼女の偉業を、白人女性作家が伝記として発表したことで知名度が上がり、現在もその功績が伝えられている。

【写真を見る】大勢の黒人兵士を率いて南北戦争を戦ったハリエット
【写真を見る】大勢の黒人兵士を率いて南北戦争を戦ったハリエット[c]Universal Pictures

歌声にも注目!映画出演3作目でオスカー候補になったシンシア・エリヴォ

使命に燃えるハリエットを力強く演じたのは、1987年英国生まれのシンシア・エリヴォ。ブロードウェイデビュー作のミュージカル「カラー・パープル」の主人公セリー役で、トニー賞最優秀主演女優賞(ミュージカル部門)をはじめ、グラミー賞やエミー賞など数々の演劇賞に輝いた世界が認めるディーバだ。

ハリエットは奴隷としての身分に絶望していた
ハリエットは奴隷としての身分に絶望していた[c]Universal Pictures

そんなシンシアは、『ホテル・エルロワイヤル』『ロスト・マネー 偽りの報酬』(共に18)に続いて、本作が映画出演3本目。第92回アカデミー賞では主演女優賞と、劇中で自らが歌う「スタンド・アップ」で歌曲賞にWノミネートされる快挙を果たしている。心揺さぶる演技はもちろん、舞台で培われたてきた彼女の歌声は必聴だ。

黒人と女性の権利を訴える活動にも尽力するハリエット
黒人と女性の権利を訴える活動にも尽力するハリエット[c]Universal Pictures

先週、アメリカのミネソタ州で白人の警察官に首を押さえつけられて黒人男性が亡くなるという事件が発生し、これに抗議するデモが激化している。日々その動向は報道され、日本でも注目している人は多いはず。図らずとも、人種差別という問題について大勢が目を向けるこのタイミングに本作は公開を迎える。黒人が奴隷として扱われていた時代に、同胞や女性の自由のために戦ったハリエットの強い意志を感じ取ってほしい。

文/トライワークス

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