カンヌ、トライベッカは延期、アヌシーとSXSWはオンラインへ…コロナ禍における映画祭の行方は?
毎年5月に南仏で開催されるカンヌ国際映画祭は、世界三大映画祭の一つで一昨年は是枝裕和監督の『万引き家族』(18)、昨年はポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』(19)が最高賞のパルムドールを受賞したことで話題になった。今年の第73回カンヌ国際映画祭は5月12日から23日まで開催される予定で、4月19日にラインナップ発表を控えていた。新型コロナウイルスの感染拡大によりフランスの大部分もロックダウンとなり、3月19日に延期を発表している。現在の見込みでは6月下旬もしくは7月上旬の開催を念頭に調整を進めていると言われている。
アメリカでは、4月15日から26日までニューヨークで開催予定だった第19回トライベッカ映画祭が延期(開催時期未定)されている。今後予定されている主な国際映画祭は、7月のカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭(チェコ)、8月のロカルノ国際映画祭(スイス)、8月のヴェネチア国際映画祭(イタリア)、9月のトロント国際映画祭(カナダ)と続いていくが、いずれの映画祭も状況を加味し開催を検討しているところだ。
コロナ禍の影響が出始めたばかりの3月13日から23日まで予定されていたテキサス州オースティンのSXSWは中止を余儀なくされた。企業ブースの展示や音楽部門など複合フェスティバルであるSXSWのうち、映画部門で上映予定だった作品をAmazon Primeにて10日間限定で配信することが発表された。4月下旬に開催予定で、アメリカ国内のAmazon Primeの会員であれば追加料金なしで視聴できる。
フランスのアヌシーで6月15日から20日まで予定されていたアヌシー国際アニメーション映画祭は、物理的な映画祭を中止し、オンライン上で特別上映を行うことを決定した。ラインナップは4月15日に発表される。昨年のアヌシー国際アニメーション映画祭では、ジェレミー・クラパン監督の『失くした体』(Netflix)が長編映画賞と観客賞を受賞し、第92回アカデミー賞長編アニメーション賞にもノミネートされている。
そして、多くの映画祭には映画の権利を国際的に売買するマーケットが併設されているが、アヌシー映画祭に付設するマーケットはオンラインで行われる。同じようにトライベッカ映画祭でも、新規作品のアイデアを売買するピッチ・イベントをオンラインで行う試みが行われる。
映画祭参加者の多くを占めるこうしたマーケット参加者にとっては、新しい作品の情報を仕入れ、オンラインでミーティングし作品を購入する動きが加速していくことだろう。各スタジオや製作者にとって、カンヌやヴェネチア、トロントといった世界配給や賞レース戦略において鍵となる映画祭の延期や中止について、映画製作時から練っていたマーケティング戦略を変更せざるを得ない状況を引き起こす。また、映画祭でプレミア上映した後の各国での配給においても、映画館が閉鎖しているいまの段階では公開日の決定も難しい。映画の上映・配給をめぐる混乱はこの先も続いていくことだろう。
文/平井伊都子