【レビュー】批評家96%が賞賛の『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』で“人生に一度”の大冒険へ
ちょうど1年前に開催されたサウス・バイ・サウスウエスト映画祭で大絶賛を集め、見事観客賞を受賞。その後全米で公開されるや、映画評論を集積するサイト「ロッテン・トマト」では、批評家の96%、観客の96%が“フレッシュ”(肯定的)という好評を博してロングランヒットを記録した『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』。今年2月に日本で劇場公開されたばかりの本作が、はやくも本日より先行デジタル配信をスタート。本稿では本作のなにが観る者の心を揺さぶるのか、その魅力に迫ってみたい。
物語は老人養護施設で暮らしているダウン症の青年ザックが、プロレスラーの養成学校に入るという夢を叶えるために施設を脱走するところから始まる。新たな世界に飛びだしたザックは、道中で漁師のタイラーと出会う。彼もまた孤独な日々を送り、同僚の獲物を盗んだことがバレて逃げだしてきたのだ。ひょんなことから一緒に旅をすることとなり、友情を築いていく2人。やがてザックを探しにきた施設の看護師エレノアも加わり、彼らの旅は想像を超えた大冒険へと変化することに…。
「トランスフォーマー」シリーズの主演で一躍ブレイクを果たしたシャイア・ラブーフを主演に迎え、「フィフティ・シェイズ」シリーズのダコタ・ジョンソンや、アカデミー賞ノミネート経験のあるジョン・ホークス、トーマス・ヘイデン・チャーチ、ブルース・ダーンといった名バイプレイヤーたちが集結した本作。そしてザック役を演じるのは、自身もダウン症を持つザック・ゴッツァーゲン。幼い頃から演技を学んできた彼は、本作が長編デビュー作となった。
ザックとシャイアは本作を通じて実生活でも友情を築いたそうで、先日行われた第92回アカデミー賞授賞式では2人揃って短編映画賞のプレゼンターを務めた。これまでもハリウッドの問題児としてアルコールやドラッグの問題が取り沙汰されてきたシャイアは、本作撮影中のロケ先でも問題行動を起こして大バッシングを浴び、一時は本作の公開自体が危ぶまれる事態にまで発展。しかしそんなシャイアを改心させたのが、「あなたはもう有名だけれど、この映画が僕にとってはようやく掴んだ機会だったんだ。でも台無しになってしまった」というザックの言葉だったという。ダウン症を持ちながら映画スターになるという夢を持っていたザックの一世一代のチャンスを自分が潰してしまうことになると悟ったシャイアは、自らセラピーに通い更生の道を選ぶ。そして無事に本作が完成することになったそうだ。