“逆詐欺映画”に“パステルカラーの『ジョーカー』”!?『すみっコぐらし』が大人に刺さる理由とは?
劇場公開時に口コミやSNSで話題に火が付き、“大人こそ泣けるアニメ”として一大ムーブメントを巻き起こした『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』(19)。リピーターも続出した本作が、現在各サイトにて配信開始されBlu-ray&DVDも発売中。見逃していたという人も自宅でじっくり楽しめる絶好のチャンスなのだ。では、それほどまでに人気を得たのはなぜだろうか?
“すみっコ”っていったい何者…?ユルかわいい彼らが偉業を達成!
“すみっコぐらし”はそもそも、2012年に誕生したサンエックスのキャラクター。寒がりのしろくまや食べ残しのとんかつなどがおり、「すみっこにいるとなぜか落ち着く」というちょっとネガティブな性格でありながらも丸っこいフォルムで愛くるしい姿が特徴だ。文房具やぬいぐるみなどのグッズが発売されたほか、山手線や京急電鉄でラッピングトレインが運航されるなどの企業コラボも展開。
知名度を徐々に上げていくなか、サンエックスとしては異例となる劇場アニメとなった本作は、昨年11月8日に公開されるやいないや週末の動員ランキングで初登場3位にランクイン。翌週には初週を上回る動員および興行収入を記録し2位に浮上したほか、今年1月時点での日本映画製作者連盟により発表された累計興行収入は14.5億円にまで上った。
あまりのギャップに子連れのお父さんも号泣!?
もともと子どもを想定した商品展開が中心であったことやかわいらしい見た目から、本作も子ども向けアニメとして捉えていた人も多かったようだ。ところが公開直後から「子どもに付き添って観たら思わず号泣してしまった…」、「予想外の結末にとにかく泣ける!」といった声や、ほかの映画に例えて「パステルカラーの『ジョーカー』」「アンパンマンだと思って観たら攻殻機動隊だったほどの衝撃」などの感想がSNSで瞬く間に広まり、そのギャップから“逆詐欺映画”とまで称された。
また一般的に子ども向けアニメはお母さんと子どもで観られることが多いが、本作はお父さんが子どもを連れて観るケースも多く見られ、先のような書き込みも含めて男性と思しきアカウントからの発言が目立った。
大人にこそ刺さる!その気になるテーマは?
なにがそれほどまでに大人たちを惹きつけるのか。まず前提となるすみっコたちの「中心にいたくない」という設定が示すように、彼らには主役の概念がない。そんな稀有なキャラクターたちに「働いているお父さんに通ずる悲哀がある」と共感する大人が一定数おり、グッズ販売でも男性客がまま見られることから、映画の公開期間には男性限定上映イベント「ぼくらもすみっコ応援団!上映会」まで開催されるなど、女性はもちろん男性にも愛されたことが人気を押し上げた大きな要因だろう。
そこでやはり気になるのは、映画の中身。普段部屋のすみっこを好んでひっそりと過ごすすみっコたちが、不思議な絵本の世界に紛れ込むというストーリーと並行して、彼らが出会った“ひよこ?”の家探しを発端にある事実が明らかになる。その事実やそこからのクライマックスへの展開に、思わず自分の境遇を重ねて目頭が熱くなってしまうのだ。劇場公開時に筆者が来場した回では、子どもたちの泣く声が聞かれたものの、途中からは大人のすすり泣きも混ざり、しまいには周囲の人の様子など構っていられないほどに、筆者自身も感極まってしまった。
自宅で子どもと一緒に仲良く観るもよし、ひとりで周りを気にせず泣くもよし。ささくれ立った大人の心をも包んでくれる優しいすみっコたちの物語に、温かい涙を流しながら癒されてほしい!
文/トライワークス
発売中
価格:通常版Blu-ray 4,100円+税、通常版DVD 3,500円+税
発売元:ファンワークス/DMM pictures
販売元:DMM pictures