【今週の☆☆☆】遊び心満載の「映像研には手を出すな!」に片渕監督のもう一つの名作『マイマイ新子と千年の魔法』…週末観るならこの作品!
Movie Walkerスタッフが、週末に観てほしい映像作品を(独断と偏見で)紹介する連載企画。今週も、映画ライター陣が”いまこそ家で観たい”オススメ映画をピックアップ。湯浅政明監督による映像化が話題となったアニメや『この世界』の片渕須直監督が手掛けた感動ファンタジーなど、バラエティあふれる2作品がそろった!
制作の過程をアニメならではの表現で視覚化!「映像研には手を出すな!」(FODほかで配信中)
自粛要請が長引き、実写映画の公開が延期になった「映像研には手を出すな!」。本作を楽しみにしていたファンの溜息が聞こえてきそうだが、そんな人はこの機会に『夜は短し歩けよ乙女』(17)、『きみと、波にのれたら』(19)などの湯浅政明監督が手掛けたテレビアニメ版も観てほしい。
全12話からなる本作は原作コミックや実写版同様、「アニメは設定が命!」の浅草みどり、俳優の親に内緒でアニメーターを目指す読者モデルのお嬢様・水崎ツバメ、金に異常な執着を見せるプロデューサー気質の金森さやかといった3人の女子高生が、“最強の世界”を目指してアニメ制作に乗り出すストーリー。
3人のかけ合いも楽しいが、本作は彼女たちのアニメ制作の過程やこだわりを通して設定や演出、音の入れ方の違いでアニメーションの見え方が変わることをアニメだからできる表現で視覚化し、説得力を持たせているところが秀逸だ。しかも、毎話タッチを微妙に変えているのも心憎いし、アニメ作りに情熱を燃やす3人の想いやバックグラウンドを描いてドラマに厚みを加えているのも好印象。
そして、クライマックスでは彼女たちが作っていたアニメ作品をフルバージョンで見せる圧巻の仕上がり!アニメを一緒に制作しているような醍醐味も味わえる。こちらを観ておけば、実写版のおもしろさも倍増するのは間違いない。(映画ライター・イソガイマサト)
空想する力が未来への希望となる…『マイマイ新子と千年の魔法』(09)
昭和30年代の山口県・防府市。かつて周防の国と呼ばれたこの地で、今日も新子は当時の暮らしに思いをはせる――。
『この世界の片隅に』(16)の片渕須直監督が2009年に発表した本作は、おでこにマイマイ(つむじ)がある空想好きな小学生・新子の物語。ひとたび空想が始まれば、あぜ道に牛車が通り、鍛冶屋が槌打つ音を響かせる。のんびりとした田舎町の風景が、活気あふれる平安の都に変わっていく描写はなんとも幻想的!いたずらをして怒られた時。東京からの転校生と仲良くなりたい時。新子がはためかせる心の翼は、私たちをはるか1000年の昔へと誘う。
そしてある事件が起こり、当たり前の明日が来なくなることを知った時も、やはり新子は空想する。厳しい現実に大人たちが思考停止するなか、見えない明日に目を凝らす新子や子どもたちのパワーは、未来への希望だ。異世界の冒険も魔物との戦いもないけれど、先がわからない時代だからこそ観ておきたいファンタジー。新子と一緒に心の翼を広げてみてはいかがだろうか。(映画ライター・ほそいちえ)
週末に映画やアニメを観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて!
構成/トライワークス
6月24日(水)発売
価格:32,800円+税
組数:3枚組 (本編ディスク2枚+サントラCD1枚)
収録話数:全12話
発売・販売元:ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
■『マイマイ新子と千年の魔法』デジタル配信中
発売中
価格:Blu-ray 6,463円+税、DVD 5,800円+税
発売・販売元:エイベックス・ピクチャーズ