『シャンハイ』のコン・リー「とても良い映画で、私自身とても気に入っているわ」

インタビュー

『シャンハイ』のコン・リー「とても良い映画で、私自身とても気に入っているわ」

太平洋戦争開戦目前の上海を舞台に、米国人諜報員の殺害事件をきっかけに巨大な陰謀が渦巻いていく様を描く歴史ミステリー『シャンハイ』(8月20日公開)。ジョン・キューザック、チョウ・ユンファ、渡辺謙など、国際的なキャストが顔をそろえるが、なかでも重要な役どころを演じるのがコン・リーだ。『ハンニバル・ライジング』(07)以来、3年ぶりの映画出演となったコン・リーは現在45歳、円熟味を増した魅力でふたりの男を魅了する。そんなコン・リーにインタビューした。

――この作品に出演を決めた理由は何ですか?

「まずはプロデューサーが、私のアメリカのエージェントに脚本を渡してくれたの。プロデューサーは、アンナの役はとても大事なので、私に演じてほしいと言ったらしいわ。私がこれに出たいと思ったのは、国際的な意味で重要性を持つ物語だと思ったから。脚本家も、監督も、外国人。そのおかげで、客観的な視点からこの時代を語ることができる。もしこれが日本人の監督だったら、個人的な意見が混じってしまうかもしれないわよね。しかも、このライターは9年もかけて脚本を書いたのよ。中国人たちが戦争に直面している、その時代の物語をね。歴史を忘れてはいけない。戦争を忘れてはいけないの」

――ふたりの男に愛されるというヒロインですが、演じるうえで最もこだわった点はどこですか?

「私が演じたアンナという女性はいつも微笑んでいるけれど、その微笑みの裏には何かがあるの。すごく優しく見えていたのに、その次の瞬間には、彼女から銃を向けられるかもしれない。危険な女性なのよ。頭が良いし、教養もある。そこが彼女の魅力なの。演じる幅のある役で、表現するべきものがたっぷりあった。やりがいのある役だったわ」

――共演者についてはいかがでしたか? 渡辺謙さんとは『SAYURI』でも共演されていましたね

「渡辺謙さんと一緒のシーンがあまりないのが残念だったわ。次は是非彼と恋人を演じてみたい(笑)。チョウ・ユンファとは『王妃の紋章』で初共演するまで、会ったことがなかったのよ。この映画でも『王妃の紋章』でも、私たちは夫婦を演じた。彼にとって、演技はとても簡単なことなの。私ですら、今でも時々、緊張する。でも彼は全然緊張しないの。いつもリラックスしている。もう、そういうのはとっくにすぎてしまっているのかもしれない。ジョンは、監督にたっぷり質問を浴びせていたわ。当時のアジアの国のことについてなどね。脚本もとことん掘り下げる。たぶん、彼自身が脚本を書いたり、映画を監督したことがある人だからかもしれない。映画についての、いろんな方面に詳しいのよ。それに共演者とのコラボレーションにも積極的。彼のことはとても尊敬するわ」

――今回、共演者とのシーンで一番印象に残ったシーンと、苦しかったシーンはどこですか?

「今回の撮影はとにかくスムーズだった。特に難しいこと、苦しいことはなかったわね。共演者はみんなプロ意識の高い人たちで、彼らとの仕事は楽しかった。時間に遅れることもなかったし、無駄もなかった。プロ意識はとても大切。今回はみんながそれを持っていたわ」

――コン・リーさんから見て、タイやロンドンで作られたシャンハイの魔都のセットはいかがでしたか?

「実はロンドンはセットではなかったの。セットでの撮影はタイだけだったのよ。タイに、シャンハイのセットを作ったの。私たちが映画の中で乗る船なんかも、この映画のために一から作ったのよ! 何もかもリアルで、すごいと思ったわ。ただ、看板などの漢字が間違っていることは、よくあった。見つけるとすぐ、『これ、直してください』と指摘したわ。タイの人たちが作ったものもあったせいじゃないかと思う。でも、漢字が正しくないと絶対駄目なのよ。ここは上海だという設定なんだもの」

――ワールドワイドにご活躍ですが、出演作品を選ぶうえでの信条を聞かせてください

「一番大事なのは脚本。それに良い監督、良い共演者がそろっているかどうかということね。私は、脚本を思いきり選り好みする。これは最高だと思うんじゃない限り、やらない。だって、そういうのに出るのは時間の無駄でしょう?残念なことに、最近特に良い脚本が減っているんだけれどね」

――では最後に作品の見どころとメッセージをお願いします

「あの時代のアジアを、外の視点という、より良い方向から見た映画。とても良い映画で、私自身も気に入っているわ」

チャン・イーモウに見出され、『紅いコーリャン』で1987年にデビューしたコン・リーは、既に女優歴24年、数々の賞を獲得してきた大ベテランだ。そんなコン・リーが数ある作品の中から選んで出演した『シャンハイ』は、自身も語っているように良質であり、アジアを代表する作品と言っても過言ではない。是非、公開の暁には劇場で堪能してもらいたい。【Movie Walker】

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