インディーズ映画の枠を破る!エキストラ1000人の野外ライブフェスシーンが刺激的
低予算の自主映画ながら、根強いファンに支持されてきた青春ヒップホップ映画『SRサイタマノラッパー』シリーズ。これら2本の映画では、入江悠監督入魂の長回しのラップシーンにぐっと胸を鷲づかみにされたが、待望の3作目『SRサイタマノラッパー3』(2012年公開)では、何とエキストラ1000人の野外音楽フェスシーンを敢行するという。インディーズ映画としては型破りな試みだが、その陰には入江監督と、彼を支えるサポーターたちの熱い情熱があった。
2009年の第19回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭オフシアター・コンペティション部門でグランプリを獲得し、劇場の初日レイトショー歴代動員記録1位をマークした『SR サイタマノラッパー』(09)。本作の舞台は、一見、尖ったヒップホップ文化とは程遠いイメージの埼玉県深谷市(劇中ではフクヤ)だ。でも、この都会に近い田舎こそ、若者たちラッパーが人生にもがく背景としてはもってこいなのだ。鬱屈する若者たちがラップを心の支えにして荒波に立ち向い、最後のラップシーンでエネルギーを爆発させる。群馬が舞台の続編『SRサイタマノラッパー2 女子ラッパー 傷だらけのライム』(09)も同様の作りだが、それゆえラストのラップの長回しシーンは最大の見どころとなる。
そして気合十分の『SRサイタマノラッパー3』で、入江監督はエキストラ1000人を迎えた野外音楽フェスの長回しシーンにトライする。でも、ただでさえ世知辛い昨今の映画業界で、それを可能にする原動力とは何なのか? それは、入江監督の心意気に加え、本シリーズにはノーギャラで参加するスタッフや、支援するサポーターが多くいるからだ。9月7日から深谷市では「映画監督入江悠の世界」というパネル展も始まったが、それもボランティアスタッフにより開催されたものである。
実際、入江監督自身が、ブログやTwitterで呼びかけて広がった輪の力が大きい。インディーズ映画界の枠を打ち破ろうとする切込隊長・入江監督の映画スピリットにほれた人々が、みんなで本作のサポーターになる、という図式だ。そういう意味で『SRサイタマノラッパー3』は、今の時代を象徴した若者たちの映画になりそうな予感。この注目の野外音楽フェスシーンの撮影は深谷市の日本レンガ工場跡地で行われ、9月23日(祝・金)に500名、25日(日)に1000名のエキストラが参加予定だ。やはり数が半端じゃないので、現在もまだエキストラを募集中である。興味のある方、是非このインディーズ映画史に刻まれるラップシーンの目撃者になってみてはいかがだろう?【文/山崎伸子】
『映画監督入江悠の世界』パネル展
日時:9/7(水)~11(日)
場所:深谷市アリオモール1階センターコート脇