日活100周年記念イベントで宍戸錠「震災の時、助けてくれてありがとう」とニューヨークで叫ぶ
9月30日より10月16日(日)まで開催されている第49回ニューヨーク映画祭で、来年100周年を迎える日活の“100周年記念イベント”が開催されている。一挙37本の映画が公開されるにあたり、日活の佐藤直樹社長と一期生で“エースのジョー”という名でも親しまれている宍戸錠がニューヨークを訪れ、『縄張(しま)はもらった』(68)の上映前に舞台挨拶を行った。
佐藤社長は冒頭、「日活は2012年で100周年を迎えますが、ハリウッドでも100年の歴史を持つのはユニバーサルスタジオだけです。日活はこれまでの長い歴史の中で1960年代のアクション映画をはじめとして、様々な優れた監督や宍戸錠さんのような素晴らしい俳優さんたちと仕事をしてきており、またクエンティン・タランティーノ監督など世界中の監督たちが影響を受けたり、コピーをするほどの数々の素晴らしい作品を生み出してきました。今後は、新たなチャレンジとして世界に目を向け、世界中で作品を上映することや、各国との共同制作などに力を入れながら、これからも自由で多様性のある、庶民の目線で権力に迎合しない作品を作り続けていきたいと思っております」と挨拶し、“世界の日活”として新たなスタートを切ることを高らかに宣言した。
その後、黒いスーツに身を包んで颯爽と舞台に登場した宍戸は、通訳がいるにも関わらず、いきなり「I am so happy!」と英語でスピーチし、観客をあっと驚かせた。
当日は10月のニューヨークにしては珍しく、あいにく土砂降りの雨模様だったが、そんな中で劇場に足を運んでくれたニューヨーカーたちにはかなり感激した様子で、「こんな天気なのにこの作品を見に来てくれて、本当に嬉しいよ。皆ありがとう。そして3月11日に日本で起きた東日本大震災で原発の問題もあったのに、アメリカが一番に日本に助けに来てくれたんだよね。この場を借りて本当にお礼を言いたい。ありがとう!」と日本を代表してスピーチしたが、途中関係者から「日本語でお願いします」と耳打ちされると、「英語でしゃべらせてよ!」と懇願し、時折日本語も交えながら、身振り手振りを交えながら堂々と英語でスピーチを続け、肝がすわった悪役ベテラン俳優の貫禄を見せつけた。
その後は、日本語でクリント・イーストウッド監督を引き合いに出し、「彼は81歳なんだよね。俺は77歳なのに、長いセリフは覚えられなくて短くしてもらってるくらいなのに、彼は現役ですごいよ。とてもかなわないけど、でも見習いたいよね。由緒あるリンカーンセンターで挨拶できるのも光栄だし、俺も頑張らなきゃって思って、日本映画をよろしくというつもりで今日はニューヨークにやって来ました。日本映画はなかなか予算がなくて大変で、DVDで利益を得ているような状態ですが、これからも日本映画はますます発展していきますよ。是非皆さん、日本映画を見てください。今日は本当に来てくれてありがとう」と、日本を代表して日本映画にエールを送った。
なお今回上映される37本は、フランキー境主演の『幕末太陽傳』(57)デジタル修正版ほか、宍戸錠主演の『拳銃(コルト)は俺のパスポート』(67)、石原裕次郎主演『狂った果実』(56)『ビルマの竪琴』(56)、『上を向いて歩こう』(60)、『肉体の門』(64)、『野良猫ロック』(70)、『丸秘 色情めす市場』(74)、『赫い髪の女』(79)、『冷たい熱帯魚』(10)などアクション、ロマンポルノなど多彩な作品が勢ぞろいしており、アートの街ニューヨークから日本映画の歴史を発信する。【取材・文NY在住/JUNKO】