金子ノブアキ&市川亀治郎『シャッフル』の現場は「寒くて、眠くて、楽しかった」

インタビュー

金子ノブアキ&市川亀治郎『シャッフル』の現場は「寒くて、眠くて、楽しかった」

気鋭の映像作家・及川拓郎の人気舞台を自ら映像化した『シャッフル』が10月22日(土)より公開される。本作で共演した金子ノブアキと市川亀治郎にインタビュー。メインの登場人物は5人。日給200万円のモニター調査で呼ばれた4人の男たちと、“担当者”と名乗る男が、予想もつかない騙し合いを繰り広げる。伏線満載でドンデン返しあり、時間軸もシャッフルされた脚本を読んだ時、ふたりはパニックになったという。

金子は語る。「活字だけだと訳がわからなくて、何度も読み返しました。それで現場に行ったら、全員が不安に思っていたようで、初めて顔を合わせた時、『セリフ覚えた?』って探り合いでしたよ(笑)」。亀治郎は、何と台本の途中で音を上げ、最後まで読まずに現場入りした。「行って初めて、自分がモニターの一員だったってことを知りました。まあ、それならそれで、リアルに行こうと」。

現場では全員で監督を質問攻めにしたという金子。「話の大まかな流れはわかったんですが、とにかく伏線がすごくて。ちょっと血迷って変なアドリブでも入れようものなら、速攻で地雷を踏むって感じでした」。亀治郎は「みんなは説明を聞いてうなずいていたけど、僕は監督の講義を聞いてもわからなくて」と言うと、金子が「いくつか知ったかぶりもしてました(笑)」と白状。続けて「実はいろんな要素が全部つながってるんです。だから、俺たちが一番作品を髄まで味わったという気がしてます。2、3回は見ないとわからないかも」とのこと。

撮影期間はたった一週間。しかも真冬の御殿場で、朝から深夜までの極寒ロケを敢行した。男くさい体育会系の現場だったという金子。「密度が濃いので、実働時間に換算すると、1日分で3、4日分の量は撮ってました。だから一週間じゃなくて、一ヶ月間くらい一緒に過ごした気分です。苦しみを乗り越えてやっていたので、その分、すごく関係性は深まりました。寝てないから、誰もが一日一回くらいは落ちちゃって(笑)」。亀治郎もうなずく。「今までしゃべっていたのに、ふっと見たら寝てたりしたよね。寒かったから、みんなホッカイロを貼ってた」。金子も「今日、気づけば上着にホッカイロが貼りっぱなしでした」と言いながら、ふたりで大笑い。

金子は「普通、寝てないとすさむのに、現場は楽しくて。怒号も飛び交わないし、思慮深い人たちだなと思いました。まあ、喧嘩をすること自体、すごく愚かなことだってことが共通認識だったし」と撮影を振り返った。亀治郎も「喧嘩したところで、また一日顔を合さないといけないから、我慢するよね。長回しが多かったから、みんなでたくさん議論をしたし。舞台の稽古にちょっと近かったかな」。

歌舞伎役者である亀治郎にとって、長回しの撮影は全く苦にならなかったという。「僕は助かったね。細切れで撮ることに慣れてないので。長回しにされればされるほど楽でした」。金子は亀治郎のセリフの暗記力に驚きを隠せなかったらしい。「その場でセリフが入るからすごい! 速読法ですよ(笑)。『台本をなくしちゃった』って言ってたけど、一回見たらその場でもう入っている。『何だよ、それって!? 化け物かよ』って」。「忘れるのも早いから」と笑顔を見せる亀治郎に、金子は「載ってるハードディスクが違う」と再び絶賛した。

短い期間の強行撮影だったが、共演者たちの息がぴったりの良い現場だったようだ。金子は見どころについてこう語る。「ほぼ1シチュエーションの映画なので、空間を限界まで使ってるという意味では舞台的かもしれない。そういう面白さを楽しんでほしい」。亀治郎は「手に汗握るというか、脳に汗をかく映画です。是非どうぞ!」とアピール。最初から最後までノンストップで繰り広げられる『シャッフル』。文字どおり、頭の中もシャッフルされるような映画なので、心して臨んで!【取材・文/山崎伸子】

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