『サマーウォーズ』の細田守監督最新作の主人公はお母さん!『おおかみこどもの雨と雪』製作発表
『時をかける少女』(06)、『サマーウォーズ』(09)の細田守監督の最新作の公開が発表された。そのタイトルは、『おおかみこどもの雨と雪』。主人公はお母さんだという。おおかみおとこと恋に落ちた19歳の少女・花が、やがておおかみおとこの子供を産み、その子育ての日々を描く「親子」がテーマが内容となるようだ。
『時かけ』で「青春」、『サマーウォーズ』で「親戚」をテーマに作品を手がけてきた細田監督が、次に目をつけたのは「親子」だった。細田監督は「僕の友人たちの夫婦に次々に子供が生まれ、彼らの子供を育てている様子やその顔を見ていて素晴らしいと感じました。昔は結婚して子供を育てることは当たり前のように思っていましたが、自分が親の世代となって、友人たちの親としての優しい目に強い憧れを感じ、そこから発想しました」と製作のきっかけを語った。
気になるのは、タイトルにある「おおかみこども」という子供の設定。監督は「子供はバイタリティーがあって何をするかわからない。その生き生きとした姿を映画にするためには、人間よりも動物の子供にしたら面白いんじゃないかと思いました。今の日本でオオカミを見られるのは動物園だけですが、ひょっとしたら僕らの知らないところで姿を変えて生きていたら。そして、3歳ぐらいの子供に対して恐竜みたいだという話もあることから、映画的な比喩を用いながら子供たちの姿を描けたらと思っています」と話した。キャラクターデザインを手がけるのは、細田作品の常連とも言える貞本義行。「おおかみこどもは半獣。半分オオカミで半分人間なので、気持ちが変わるようにおおかみに変身して草原を駆け回ったり、人間になったりします。おおかみ男はいたけど、おおかみこどもって今までないんじゃないかなと思って」と笑顔でコメント。史上初のおおかみと人間のハーフ、おおかみこどもの姿に期待が高まる。
記者から「東日本大震災が製作に与えた影響は?」という質問が上がり、監督は「あの日は、新しいスタジオで打ち合わせしている最中でした。あの震災が製作に与えた影響はもちろんありますし、しばらく何も手につきませんでした。これから日本人としてどうやって生きていくかを深く考えさせられました。現在のポスターには、花と雨と雪の3人しか描かれていませんが、劇中にはたくさんの登場人物が出てきます。子供を育てるのは親ですが、実際は親だけでは育てられない、一人では生きていけないということを感じたからです。あの震災で感じた思いは、映画の隅々まで入り込んでいると思います。本当に大事なものは何なのか、皆さんと考えていけたら」と作品に込めた思いを語った。
またアニメーション映画で注目される声優のキャスティングについて、監督は「現在、まさにオーディションの最中。今日もこれから予定してますし、先週の土曜日には50人近くの人をオーディションしました。あらゆる分野の人が来てくれて、才能のある人も多いですが、役に合う人を選んでいければなと思っています」と答えた。タレント、無名に関わらず選出されてるというキャスティングにも注目だ。
脚本を手がけるのは、『時かけ』『サマーウォーズ』に続く3度目のタッグとなる奥寺佐渡子。現在、本作は2012年7月の公開に向けて製作中で、その全貌は監督の頭の中だけにしかない。今後明かされる新たな情報と共に来年の公開を待ちわびよう。【取材・文/鈴木菜保美】