アラフォー女性が輝く秘訣は?『ウタヒメ』の木村多江「毎日をゴム跳びみたいに楽しむこと」
五十嵐貴久の小説「1995年のスモーク・オン・ザ・ウォーター」を映画化した『ウタヒメ 彼女たちのスモーク・オン・ザ・ウォーター』が2月11日(土)より先行公開、2月18日(土)より全国公開される。行き詰った4人のアラフォー女性がロックバンドを結成! 奮闘しながらも輝きを取り戻していく姿が生き生きと描かれる。出演の木村多江を直撃し、撮影秘話から美しさの秘訣まで、たっぷりと話を聞いた。
演じるのは男運の悪いバツイチ女性のかおり役。これまでの木村のイメージとは違う、あっけらかんとした女性だ。「初めて脚本を読んだ頃は、まだ私は弾けた役柄をやっていなかった頃なので、私なんかにこういう役を振ってくださる勇気がすごいなと思って! 感動しました(笑)」。
どう魅力を感じたのだろうか。「かおりは開き直るのが早いんです。問題の解決の仕方が強引ではあるけれど、それって人に勇気を与えるんだなって。純粋だけど子供みたいで、傍から見ていたら、ちょっと痛いと思うような行動を真剣にやって、より痛さを出したいと(笑)」。
弾けた役柄から元気をもらったと語る。「楽しかったですね! 彼女みたいにスパッと言えちゃうと楽なんだろうなって。『好きだ』って思ったら、『好き!』って言える。私だったら、恋愛関係にはなれないだろうなとか、友達関係も壊れちゃったらとか色々考えて言えないと思う。かおりは一歩踏み出す勇気を持った人。それって人生を変える可能性を持っているものだし、素敵なことですよね」。
黒木瞳、山崎静代、真矢みきと共にアフレコなし。実際に楽器を練習して臨んだ本作。「みんなが先生について3ヶ月くらい個人レッスンで練習して。初めてバンドの音を合わせた時は、演奏中に目が合ってアイコンタクトをしたりしていると、『うわー! 私、ミュージシャンよ!』って、そういうノリになっちゃって(笑)! 撮影が終わってからも、みんなと『バンドやりたいね』って話していたんです」。
女4人が罵り合いになるシーンも印象的だ。木村は黒木演じる美恵子にビンタをお見舞いされる。「瞳さんも『本気で殴るからね』って言うので、『思いっきりお願いします!』って言って。そうしたらものすごい勢いできて、目がチカチカってしちゃって。ほっぺたにもみじ跡ができて、瞳さんが『痛かったね、大丈夫?』って、冷やしてくれました。あのシーンは撮る前も撮った後も、みんなが本当に切なく悲しい気分になってしまって。でも友情って、本音を出し合ってわかるものだと思います」。
かおりの「バンドやろう!」の一言で、新たな一歩を踏み出していく4人。自身にとっての転機とは? 「『ぐるりのこと』に出たことです。その頃、役者として行き詰まっていて。私たちの仕事って、結果を残さないと、次がないという恐怖感にさらされている仕事。すると、向こうが狙っているものは何だろうって、探っている自分がいて。自分自身、役者を楽しめなくなっていたんです。20代の頃は、結果がゼロかもしれなくても、面白いからやってみよう!っていう思い切りがあったのに、だんだんそうじゃなくなってきて」。
続けて、大切な出会いについて明かしてくれた。「そんな時に『ぐるりのこと』に出会って。本当に一つの役に向き合って、行くところまで行く覚悟をしたことで、お芝居ってこういうものなんだって気付けた。その時に出会う作品って、人と一緒で、出会うべくして出会っていると思う。一期一会で。『ウタヒメ』も最初にお話があったのはだいぶ前で。でも、それから色々なことがあり、今みんなが前向きに頑張っている時に公開することができる。とても嬉しいです」。
年を重ねることが楽しく思える本作。いつまでも輝く秘訣は? 「良いシワを作ることかな。怒ったりするよりは、ポジティブな言葉を言ったり。言霊みたいに『できない』っていうよりは『できるかも』って言って、何でも楽しむことが大事。私も以前は『自分が嫌い』って思ったり、鎧を着ているみたいだった。でも、だんだん心を開いていくと、周りの人も開いてくれるんですね。すると日常が楽しくなって。人間って大きな幸せがほしいと思うから、それを超えられないと不幸せって思っちゃう。だから、幸せのハードルをゴム跳びくらいにしておくんです(笑)。ポーン、ポーンって毎日楽しく飛べちゃうように。だって、10年後に怒りジワばっかりだったら嫌じゃないですか。絶対シワは増えるから、だったら良いシワを作りたいなって」。
これから挑戦してみたいことを聞くと、「幸薄い系の役はこれまで色々とやってきて、バリエーションができるようになってきたんですけど、やっぱりコメディって難しくて。もっとチャレンジしてみたいですね」と笑うが、本作での彼女の弾けっぷりはとってもキュート! ハードルを飛び越えていく彼女の輝きを、是非本作で体感してほしい。【取材・文/成田おり枝】