お金持ちは貧乏人よりもボタンの数が多い服を着る。その理由とは?
全ての人間の成長が25歳で止まり、“余命の時間”が通貨になるという斬新なストーリーのアクションサスペンス『TIME タイム』(公開中)。舞台となる近未来では、悠々と時間を持て余すお金持ち(ここでは時間持ち!?)が住む富裕ゾーンと、時間=寿命が死活問題という貧乏人が住むスラムゾーンに分けられている。彼らには、服装1つをとっても、大きな違いがある。ここでは登場人物のファッションに注目したい。
メガホンを取ったのは、『ガタカ』(97)や『トゥルーマン・ショー』(98)など、独創的な世界観を表現してきた稀代のストーリーテラー、アンドリュー・ニコル監督。監督は本作の2つのゾーンの人間についてこう説明する。「誕生日を迎えた瞬間、自分の左腕に余命時間がデジタル時計のように表示される。格差社会が進み、富裕ゾーンの住民は永遠に生きられる一方、スラムゾーンの人間は平均寿命がわずか23時間しかない。そのため、貧しい人々は寿命を稼ぐため、日々の労働に追われてしまう」。
彼は、それをビジュアル的にわかりやすくするために、ファッションでも明らかにわかる違いを出した。それがボタンの数だ。「スラムゾーンの住人は、服を着るのに時間をかけることができないので、ファスナーが多い服を着ています。富裕ゾーンの住人はボタンがたくさんついた服を着ていて、これは自分の裕福さをアピールする行為なのです」。なるほど、スラム層はジッパーやTシャツなど、さっと着替えられる服を着ていて、男性は無精ヒゲがお決まり。でも、富裕層はドレスやスーツなどの豪華な衣装を身につけ、身だしなみもばっちり。女性はメイクも濃い目だ。
また、スラム層は日々を懸命に生きていて、感情表現も豊かだが、逆に富裕層は無感情で無表情の人間が多いというのも興味深い。映画では、合理的な近代化に警鐘を鳴らし、恵まれすぎていることが果たして本当に幸せなのか?という価値観を突きつける。果たして、あなたはどう思うのか? 見た後で、本当の幸せとは何か?と自分に問いたくなる映画である。【取材・文/山崎伸子】