『おかえり、はやぶさ』初日舞台挨拶で藤原竜也「国を挙げて盛り上げたい」
小惑星探査機はやぶさの偉業と人間ドラマを3D映像で美しく描いた『おかえり、はやぶさ』が3月10日(土)に公開初日を迎え、出演の藤原竜也、杏、前田旺志郎、三浦友和が本木克英監督と共に舞台挨拶を行った。明日3月11日は、昨年の東日本大震災が起こった日としてだけでなく、日本の宇宙開発の歴史において記念すべき日ということで、舞台挨拶には日本で初めて打ち上げられたロケットなどが登場。キャストたちそれぞれが宇宙への思いを明かした。
度重なるトラブルに見舞われながらも、7年間という歳月をかけて60億kmもの旅から地球に帰還した小惑星探査機はやぶさ。そこに関わる人間ドラマを感動的に描いた本作。メガホンを取った本木監督は、「この映画は震災後に製作を始めました。今、日本人に伝えるメッセージは何だろうという思いを込めて作りました。僕の思いは、ここにいるキャストの劇中のセリフに込めましたので伝わったのかなと思います」とコメント。JAXAエンジニアの助手の青年、大橋健人役を演じた藤原竜也は「僕自身、もともと宇宙に興味があったので、夢のあるこの作品に関われて幸せでした」と映画に参加できた喜びを語った。
落ち着いた大人たちの中で、「こんにちわ!イエーイ!」と元気いっぱいの挨拶をしたのは、宇宙を夢見る少年・風也を演じた前田旺志郎。普段は、兄とコンビを組んでいるお笑い芸人まえだまえだとして活躍している旺志郎にとって、舞台は手馴れたもので、「旺志郎は、最初は宇宙とかあんまり興味がなかったんですけど、この映画でいろんなことを知りました。みんなはどうですか?」と堂々と観客に質問を振るなどして楽しませてくれた。そんな旺志郎に、司会者から「明日3月11日は、日本の宇宙開発にとって歴史的な記念日。何の日かわかりますか?」と問題が。旺志郎は「何やろう? えっと、あれなんだっけ、イカロスにこうなったやつ」などと藤原や杏に助けを求めながら精一杯答えようとするが、不正解。「明日は日本の宇宙開発の父、糸川博士が1955年ペンシルロケットの発射実験を行った日でした」という正解を聞いた旺志郎は、「そんなんわかるわけないやん!」と絶妙の間で突っ込みを入れ、藤原たちを笑わせた。
はやぶさの成功の影に、挫折と失敗を繰り返した、のぞみのプロジェクトマネージャー役を演じたのは三浦友和。「1955年というと、戦後10年しか経ってないですね。その日が3月11日という偶然には、思うところがあります。焼け野原だったところから、こういうものを打ち上げるような夢を持った人がいたんですね。今はきつい現実から打開しなきゃいけないことが最重要課題ですけど、夢や希望を持つことも大切だなと思いますし、ちょっと複雑な気持ちですね」と、現在の日本が置かれた状況に対する心境を語った。また舞台挨拶後半には、会場でロケット発射の音を体感することに。発射地点から3km離れた音の半分というボリュームだったが、その爆音に杏は「まさかこんな映画館の中でこういう音が聞けるなんて、この壇上が揺れました」と笑顔を浮かべた。
最後に藤原は、「昨日、2014年にははやぶさ2号が打ち上げられるというニュースを聞いて、応援していこうと思いました。もっともっと国を挙げて日本の力を世界に見せていけたら盛り上がっていくんじゃないかなと思います」と力強く作品をアピールした。邦画映画会社3社の競作も話題を呼んだはやぶさも、この『おかえり、はやぶさ』で終結だ。はやぶさのファンはもちろん、まだ“はやぶさ映画”に触れていないという人も、日本が誇る宇宙科学技術と、それを支える人間たちの姿から、希望や夢を持つことの大切さを感じてほしい。【取材・文/鈴木菜保美】