未来のスティーヴン・スピルバーグを探せ! 第41回New Directors New Films festival開催
映画監督の登竜門ともいうべきNew Directors New Films festivalが、3月21日から4月1日(日)まで、ニューヨーク近代美術館(MOMA)の劇場で開催されている。
29ヶ国から長編29作品と短編12作品が出展されている同映画祭は、文字通り、各国の新人監督による新作のお披露目の場となっているが、当時はまだ無名だったスティーヴン・スピルバーグ、ペドロ・アルモドバル、ダーレン・アロノフスキー、スパイク・リー、ギルレモ・デル・トロ、ウォン・カーウァイ、ヴィム・ヴェンダースなど、名だたる監督を発掘してきた経緯を持つことから、鋭い選択眼は疑うまでもない。
昨年のオープニング作品に選ばれたJ・C・チャンダー監督作『マージン・コール』(日本未公開)は、2008年に起きた世界金融危機で破産申請を余儀なくされた大手投資銀行(リーマン・ブラザーズがモデル)の終焉を描いたタイムリーな作品だったこと、そして『スタートレック』(09)で若き日のスポックを演じたザカリー・クイントが製作と主演を兼ね、ケビン・スペイシー、ジェレミー・アイアンズ、スタンリー・トゥッチ、ポール・ベタニー、そしてデミ・ムーアなど、そうそうたるキャストが名を連ねていることで大いに話題になった。
そして、今年のインディペンデント・スピリット・アワードで同作は、初監督最優秀作品賞とロバート・アルトマン賞を受賞したほか、アカデミー脚本賞にノミネート、その信頼度と注目度は抜群と言えよう。
今年もフランス、レバノン、イタリア、エジプト合作のオープニング作品『Where Do We Go Now?』を筆頭に、『Teddy Bear』(デンマーク)、『Romance Joe』(韓国)、『The Raid: Redemption』(インドネシア、アメリカ)、『Donoma』(フランス)、『Gimme the Loot』(アメリカ)など、バイオレンスからヒューマンドラマまで、実に多彩なラインナップがそろっており、宝探し的な楽しみが味わえる。
また、同映画祭が開催される20年以上前にスタンリー・キューブリック監督が手がけた初長編映画『恐怖と欲望』(53)を上映して、キューブリック監督にオマージュを捧げるほか(借金をして製作した同作は赤字に終わったが、その当時、同映画祭が開催されていたら間違いなくラインナップに入っていただろうという確信のもとに選択)、クロージング作品は劇場に足を運ぶまでタイトルが明かされず、「間違いなく今年の話題作の一本になる!」と主催者が太鼓判を押す作品をサプライズ上映するといった新しい試みもなされている。
来年はどの監督の作品がショーレースに絡んでくるのか、そして未来のスピルバーグ監督となるのはいったい誰なのか、今から楽しみだ。【NY在住/JUNKO】