“性と生”を描いた日活ロマンポルノのめくるめく官能の世界とは?

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“性と生”を描いた日活ロマンポルノのめくるめく官能の世界とは?

今年9月で創業から100周年を迎える日活。昨年末には、日活創立100周年記念として、川島雄三監督の傑作時代劇『幕末太陽傳』(57)のデジタル修復版が公開され、新旧の映画ファンが劇場に足を運んだ。さらに昨年末から今年にかけて、100周年を記念した関連イベントとしてフランスやアメリカでの日活作品の巡回上映も実施。ニューヨークのリンカーンセンターで行われた上映には、日活を支えた宍戸錠が会場を訪れ、アメリカの日本映画ファンを喜ばせた。

そして日活創業100周年を記念した特別企画として開催されるのが、“日活ロマンポルノ”に焦点を当てた特集上映「生きつづけるロマンポルノ」である。日活ロマンポルノとは、1971年から1988年までに日活で劇場公開された成人映画で、“10分に1回、カラミのシーンを作る”“上映時間は70分程度”などの一定のルールに基づいて製作された作品群のこと。上記のルールさえ守れば、比較的自由に映画を製作できたことから、監督自身の作家性がダイレクトに反映された作品が多く生み出された。また、日本最古の映画会社として、“東洋一のスタジオ”と評される撮影所を擁していた日活は、長い歴史の中で培われた人材や、一般映画にひけをとらない機材や美術を駆使してロマンポルノを作り上げた。製作費自体は低予算であるものの、それを感じさせないゴージャスな画作りや、俳優陣の充実ぶりは、現在の一般映画と同様に公開されても全く遜色がないといえる。

5月12日(土)からのユーロスペースでの開催を皮切りに、全国で順次実施される今回の特集上映では、日本における映画批評の重鎮、蓮實重彦、山田宏一、山根貞男の3名が約1100本のロマンポルノ作品の中から32本を選出。うち22本がニュープリントで上映される。選者の一人である山根貞男は「日活ロマンポルノから輩出した多くの才能が、1980~1990年代の日本映画の中枢を担ったといっても過言ではない。監督やプロデューサーについていえば、彼らが1960年代の日活アクションの現場を助手時代に経験したことの意味は大きい。つまり、日活ロマンポルノの作品群には、日活映画の素晴らしい伝統が流れ込んでいるのである」とコメントを寄せている。

今回の特集上映に選出された32作品は、現代劇から時代劇、シリアス系からコメディまで、幅広いジャンルの作品が網羅されている。ロマンポルノファンだけでなく、映画ファンにはおなじみの神代辰巳監督の『赫い髪の女』(79)や、公開当時に深作欣二監督をはじめとする多くの映画関係者に衝撃を与えた田中登監督の『(秘)色情めす市場』(74)、相米慎二監督が唯一残したロマンポルノ『ラブホテル』(85)など、日本映画を語るうえで外せない傑作がラインナップされている。さらに、長い消息不明状態から、死亡説なども囁かれ、昨年、20数年ぶりに公の場に登場した、曾根中生監督作品の中から『わたしのSEX白書 絶頂度』(76)、『天使のはらわた 赤い教室』(79)など、4作品が上映される。

日本映画界の斜陽期を支え、多くの才能を輩出したロマンポルノ。リアルタイムでロマンポルノを体験した映画ファンはもちろん、ロマンポルノに触れたことのない若い映画ファンにも、ロマンポルノならではの充実した映像と、そこで描かれる多様な男女の“性と生”をスクリーンで体感してもらいたい。【トライワークス】

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