鈴木杏の体当たり演技は必然!? 中上健次原作の映画に共通する秘密とは|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
鈴木杏の体当たり演技は必然!? 中上健次原作の映画に共通する秘密とは

映画ニュース

鈴木杏の体当たり演技は必然!? 中上健次原作の映画に共通する秘密とは

高良健吾と鈴木杏の若手実力派俳優の共演で、男女の破滅的な愛の逃避行を描いた『軽蔑』(6月4日公開)。歌舞伎町でポールダンサーとして働くヒロインを演じた鈴木杏の大胆で官能的な演技が話題を集めているが、その演技の秘密が原作者である故・中上健次の作品にあったことをご存知だろうか?

1946年、和歌山に生まれた中上は、羽田空港などで肉体労働に従事した後、作家としてデビュー。1976年には「岬」で戦後生まれ初の芥川賞を受賞し、当代を代表する作家に成長する。独特の文体と、血脈を神話的に描いた重厚な世界観で圧倒する彼の作品は、映画界にも多くのインスピレーションを与え、長谷川和彦監督の『青春の殺人者』(76)、藤田敏八監督の『十八歳、海へ』(79)、神代辰巳監督の『赫い髪の女』(79)、柳町光男監督の『十九歳の地図』(79)と、中上文学を原作とした作品は数多い。

そして、それら映画化作品に共通しているのが女優の体当たりの演技なのだ。『青春の殺人者』で原田美枝子、『十八歳、海へ』で森下愛子がそれぞれ大胆な濡れ場に挑戦し、ロマンポルノという枠を越えた日本映画の傑作としても知られる『赫い髪の女』では、宮下順子が石橋蓮司と男女の極限の愛の形を見せている。もちろん、脱ぐことが比較的当たり前だった当時と現代の時代背景の違いなどもあるが、中上健次という作家の文学が性愛を通じた男女の業をあまりにも鋭くとらえているため、映画化作品においても自らの殻を突き破るような演技を要求される点が根底にあるのだ。

「軽蔑」は、中上の死の一ヶ月前に刊行された最後の長編小説。女性視点から描かれているため、彼の著作の中でも異色作と呼ばれるが、軸に存在する男女のどうしようもない愛の形は他の作品と何ら変わらない。そして、その物語に全力で挑んだ鈴木杏の演技は、間違いなく映画に本格的な雰囲気と気迫を与えている。今年度、最も重要な作品の一つになるであろう本作を是非劇場でご覧いただきたい。【トライワークス】

作品情報へ

関連作品

  • 軽蔑

    2.3
    1
    高良健吾×鈴木杏W主演、壮絶な純愛を描いた中上健次の長編作品を映画化
    Amazon Prime Video U-NEXT Hulu