これぞ最高に贅沢な映画体験! イタリア長編映画は6時間半を超える超大作
一般的な映画の上映時間といえば、大体1時間半から2時間くらいが相場だろう。とはいえ、たとえば『風と共に去りぬ』(39)や『タイタニック』(97)のように3時間以上の大作映画というのも決して珍しくはない。しかし、これが6時間を超える作品となると話は違ってくる。7月21日より公開されているイタリア映画『ジョルダーニ家の人々』は、上映時間が6時間39分にも及ぶ極めて異例の作品だ。
もちろん、これまでに6時間を超える大長編映画が全くなかったわけではない。史上最長の邦画『人間の条件』(59~61)は9時間半に及んでいるし、トルストイ原作のロシア映画『戦争と平和』(65~67)も7時間だ。だが、それらが戦争をテーマにした重厚な作品であるのに対して、本作が描くのはローマに暮らすありふれた家族の物語だ。ある出来事をきっかけに崩壊してしまった家族が、流れ行く月日の中でもう一度その絆を結んでいこうとする姿を、6時間39分という時間をかけて丹念に描いている。これだけ長いと、ついうとうとと夢の世界に旅立ってしまいそうだが、マスコミ試写会では居眠りをしている人は皆無とのこと。それほど内容に引き込まれてしまう映画というわけだ。
ちなみに、ギネス認定されている世界最長の映画はまさかの87時間。1987年にアメリカで一度だけ上映された『The Cure for Insomnia』という作品がそれだ。内容はひたすら詩の朗読が繰り返されるだけで、ストーリーなどは一切ない。あまりにも冗長で退屈そうな作品に思えるが、実はこの作品のタイトルを訳すと「不眠症の治療」となる。もちろん医学的な根拠があって作られたものではないが、それでも不眠症治療には絶大な効果をあげそうだ。
最近は徐々に少なくなってきている大長編映画。6時間や7時間も続くような作品を前にすると、思わず身構えてしまいがちだが、大作だからといって肩肘張って見る必要はない。肩の力を抜いて見れば、大長編映画ほど豊かなテーマとメッセージを読み取ることのできる作品は他にないだろう。そして、映画館のシートに腰をかけ、一日をかけてじっくりと映画を向き合うという最高に贅沢な時間を過ごせるはずだ。是非楽な気持ちで、流れ行く時間に身を委ねて鑑賞していただきたい。【トライワークス】