『ヘルタースケルター』で沢尻エリカと共演の綾野剛「ただ潔く堕ちる記号に徹した」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
『ヘルタースケルター』で沢尻エリカと共演の綾野剛「ただ潔く堕ちる記号に徹した」

インタビュー

『ヘルタースケルター』で沢尻エリカと共演の綾野剛「ただ潔く堕ちる記号に徹した」

沢尻エリカ主演、蜷川実花監督作『ヘルタースケルター』(7月14日公開)で、寺島しのぶ扮する羽田美知子の恋人・奥村伸一役を演じた綾野剛にインタビュー。沢尻扮するりりこに誘惑される男役を、彼は「ただ潔く堕ちていく記号に徹して演じた」と語る。常に自分のやるべきポジションを冷静に見極め、作品にスパイスを与えてきた綾野剛。現場での撮影秘話や、沢尻エリカと共演した感想について語ってもらった。

原作は、岡崎京子の同名人気コミック。芸能界でトップスターの座へ上ったりりこ(沢尻エリカ)は、全身整形を施した作り物の美女だった。美に執着し、愛を求め続けるりりこは周囲の人間を翻弄しつつ、やがて自分自身の身を滅ぼしていく。現場については「欝よりは躁、アンダーよりアッパーでした。この現場独特のことを言うなら、緊張感があるのに硬くないってところです。緊張感があるのに冷徹ではなく、太陽が高いから、寒くならない。ピリピリした雰囲気は一切なかったです」。

奥村役については、「“記号”になろうと思いました。それでこの作品が1mmでも良くなればと思って」と語る。「本作では、奥村が実は良いヤツだという人間性を与えたりする必要は一切ないと思ったので、そこは潔く、余計なドラマは生まれないようにしました。この映画は、りりこの映画だから」。

彼は、奥村の役どころを、こう語る。「絶対悪がいて、正義の主人公がいる。悪が悪であるほど、正義が立つわけです。絶対悪ではなく正義に理解のある悪だったとしたら、正義に肩入れしちゃうかもしれない。今回の奥村役ではそれでは駄目で、感情移入の余地がない絶対悪をやらなければいけなかった。実際に、りりこと寝た後も、ミチコとやり直そうとしたり、泣いたりして、こいつも苦しんでると思われるような隙間は、これっぽっちも必要ないと思ったんです。僕はどう思われても構わないし、 僕は映画のためなら何も惜しまないので」。

沢尻エリカと共演した感想については、「女優がいるなと思いました」と明言。「現場での沢尻さんを、りりことしか見てなかったです。そこは一貫してました。特にああいう作品は、そういう状態に自分を持って行かないと、大変なところへ転がっていく気がしたんです。りりことして彼女を見ていて、そうさせてもらえたことが彼女のすごさだと思いました。彼女はりりこだった、それだけです」。

本作を経て、彼はどんなものを得たのか? 「たくさんあります。だけど、もう同じことはできないとも思っています。芝居的、技術的なものを得たって感覚はなくて。得たけど、それはもうあの役でしか使えないものだと思うので。自分の技として、過去の経歴には残っていくとは思いますが。ただ、ああいう世界で踊れた、ああいう世界観の中で生きられたことで、十分何かを得られたとは思います」

『ヘルタースケルター』の後、『るろうに剣心』(8月25日公開)、『新しい靴を買わなくちゃ』(10月6日公開)、『その夜の侍』(11月17日公開)、『横道世之助』(2013年公開)、『夏の終り』(2013年公開)も控えている綾野。今後の役者としての未来像について尋ねると、「一切わからないですし、考えてないです。未来について考えることは嫌なので。いつ死ぬかわからないですし。ただ、今、決まっている仕事は絶対やりたいので、今、死んだら後悔するから、頑張ってそれまでは生きようと思っています。どういうふうに将来なりたいかってことは全く考えない。常に今、一瞬、一瞬。今、このインタビューも全力でやっています」。

仕事についての達成感についても「手応えとかを感じたことがないし、満足したことなど一回もないです。満足したらやめますよ」と断言。その目付きは、真剣そのものだ。ライトで軟派な役柄から、不器用で硬派な役まで、様々な仮面をつけられる綾野剛の素顔は、思慮深くて、謙虚。刹那に勝負を賭ける姿勢には大いに敬服する。【取材・文/山崎伸子】

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