『メリダとおそろしの森』の監督に聞く、王妃がクマになる斬新な設定の裏話
ディズニー ピクサー作品としては初の女性キャラクターを主人公にした映画『メリダとおそろしの森』(7月21日公開)。本作のヒロイン、メリダはくるくる赤毛の勇ましいプリンセスだ。弓の名手で、愛馬に乗り、運命に立ち向かうという、おとぎ話の枠には収まりきらないじゃじゃ馬だ。そんな破天荒なプリンセスの冒険物語を手掛けたマーク・アンドリュース監督にインタビュー。
アンドリュース監督にとって、本作は初の長編監督作となった。今の心境を尋ねると「ふーって感じで、安堵しているよ」と、お茶目に汗を拭う仕草をして笑顔を見せた。「無事に終わって良かったなって。素晴らしいスタッフと映画を作ることができて、本当に良い体験ができた。仕事へ行く時は、常にワクワクしていた。挑戦することが大好きなので、早く次回作が撮りたいよ」。
中世のスコットランド文化を背景に、恐ろしい呪いをかけられてしまった王国を救おうと奮闘する王女メリダ。母である王妃が、魔法でクマになってしまうという設定が実にユニークだ。「もともとケルト民族の民話や伝説で、人間が動物に変わってしまうような物語があったんだ」という監督。「メリダが自分勝手な行動に出た結果、お母さんが大変な目に遭ってしまう。そこで彼女は初めて自分の過ちに気付き、お母さんを元の姿に戻そうと必死になるんだ」。
中身の人格は王妃でも、時折、凶暴なクマの本能が出てきて、ヒヤリとさせられるが、そのスリルも監督の狙い通りだ。「より物語を複雑化することで、娯楽性が高まるからね。さらに王が、王妃であるとは知らずに、そのクマを狩ろうとする。メリダは、父親によって母親が殺されてしまうかもしれないという最悪の事態を避けようと必死になる。そのジレンマを表現したかったんだ」。
また、通常のプリンセス映画は、イケメン王子が登場し、ふたりが結ばれて一件落着というのがお約束だが、本作ではあえてロマンスを封印した。その理由とは?「メリダの外見を見れば、シャイで弱いプリンセスじゃなくて、大胆で自信家で勇敢なヒロインだということが瞬時にわかるはず。彼女の生き生きとした精神が伝えられる物語にしたいと思ったから、イケメン王子は出さなかったんだ」。
長編監督デビュー作ながら、『メリダとおそろしの森』を型破りなプリンセスが活躍する冒険物語に仕上げたマーク・アンドリュース監督。彼が好きな日本のクリエイターが、宮崎駿や大友克洋というのも大いに納得だ。AKB48の大島優子がメリダの声を務めた日本語吹替版も好評なので、是非この夏は魅力あふれる規格外のプリンセス・メリダに会いに劇場へ出かけてほしい。【取材・文/山崎伸子】