鬼才・荒牧伸志監督『スターシップ・トゥルーパーズ』で原点回帰。限りないCGアニメの可能性とは

インタビュー

鬼才・荒牧伸志監督『スターシップ・トゥルーパーズ』で原点回帰。限りないCGアニメの可能性とは

ロバート・A・ハインラインの傑作SF小説「宇宙の戦士」を映画化し、熱狂的なファンを生み出し続けている『スターシップ・トゥルーパーズ』シリーズ。15周年記念作がフルCGアニメ『スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン』(7月21日公開)となって登場する。ハリウッドからの熱烈なオファーを受けて、メガホンを取るのは、『APPLESEED』(04)や『エクスマキナ』(07)で知られる荒牧伸志監督だ。「自身の原点に帰る意味もあった」と語る、その理由。アニメの可能性について直撃した。

もともとはメカデザイナーとしてキャリアをスタートさせた荒牧監督。原作には、並々ならぬ思い入れがあるという。「高校時代に読んで、衝撃を受けたんです。ストーリーそのものよりも、表紙や挿絵のデザインにリアリティがあって、すごく格好良くて。『SFなのに、存在感があるなあ』って。僕はメカ好き少年だったので、そこに反応してしまって(笑)。この業界に入るきっかけ作りになった原作なんですよ」。

そして出現したのが、ポール・バーホーベン監督による実写作。「バイオレンスシーンやバグのデザインが、とにかく秀逸で。ものすごい群れでやって来るバグの集団に打ちのめされた。ただ、パワードスーツが出てこなかったんですよね」と語る。パワードスーツとは、兵士たちが身につける“強化防護服”。原作では、細かな描写で、スーツの機能やイメージが表現されている。メカ好き少年の好奇心は、大いにくすぐられたという。「バーホーベンの世界観に、パワードスーツをぶちこみたかった。原作のテイストを足して、バグとしっかりと戦わせれば、もっとスペクタクルなものが作れると思ったんです」。

パワードスーツへのこだわりが、今回のモチベーションの一つとなっている。デザインも圧巻だが、スーツを着た兵士たちのリアルな動きにも驚かされる。「パワードスーツを着ている“人間”そのものに存在感がないと嘘っぽいものになってしまう。世界を崩さないためには、キャラクター描写が大切で。まず、派手なシーンでパワードスーツの戦いを見せて、その後にキャラクター描写をしっかりと見せる。『こいつら、面白い奴らだな』って思ってもらってから、また彼らには戦闘シーンでえらい目に遭ってもらう。見ている人が、兵士と一緒に現場にいるような距離感を作り、スリリングな体験をしてもらいたかった」。

CGを使いながら、追求したのは“生身”の感触だ。リアルに見せるコツは?「モーションキャプチャーを使ってきた経験上、感じたことがあって。絵コンテや、細かいこちらの演出プランを役者に押し付けてしまうと、なかなかこちらの思った以上のものにはならないんですよね」とこぼすが、続けて、新たな挑戦を明かしてくれた。「今回は、アメリカの役者さんを使っていますが、彼らのアイデアから出てきた自然で面白い動きを、どんどん取り込んでいった。たとえば、彼らのメンタリティーって、やっぱり僕らと違うじゃないですか。女性と接する時のノリとかも、僕が考えた段取り芝居とは違う。『ここでもうグッと迫っちゃうんだ!』とかね(笑)。そういった息使いの面も含めて、できるだけCGの中に取り込んで、“生身”の生み出す瞬間を大事にした。アニメって、作風によって、自由にルックスも選べるし、演出方法も相当コントロールできるものなんです。それが一番面白いところだと思いますね」。

自らの原点に帰り、新たな試みに挑んだ本作では、改めてもの作りの楽しさを実感したという。「SOLA DIGITAL ARTSというスタジオを作って、スタッフ集めから始めた作品。これまで作品を一緒にやってきて、『コイツなら、放っておいてもやり過ぎるくらいやっちゃうだろう』という人たちを集めた。同じ方向を向いている人が集まると、1+1のパワーが、もっともっと増えて発揮される。出来上がりを見て、『よくここまでにしてくれたな!』という手応えがあります。辛い思いもしてきたけど、これまでやってきて良かったなと思いましたよ」。

「結局、自分の見たいものしか作れないんです」と、楽しそうに笑う。これからトライしてみたいことは?「今、漫画原作で実写化することって多いじゃないですか。それを、キャラクターの造型や漫画のテイストを活かしながら、CGに落とし込むことってできないかなって。たとえば、少女漫画的な美形のキャラクターを、CGでリアルな存在感として描いてみたり。また違った面白さが出るんじゃないかな」。アイデアは尽きない様子で、「まだまだCGアニメの可能性はありますよ。これからです」と力強く語ってくれた。少年の頃から憧れた、大好きな世界観を表現するのに、CGアニメという手段はぴったりだった。その道を歩む中で得た、信頼できるスタッフと共に、今、アニメの限りない可能性を感じているようだ。

最後に、「CGって触れないものではあるのですが、バグの怖さだったり、パワードスーツの手触り感などを詰め込んで、存在感、臨場感のある映像ができた。だまされたと思って、一度見てみてください」とアピール。その言葉通り、ハラハラ&ゾクゾク楽しめるエンタテインメントに仕上がっているので、是非とも映画館で見てもらいたい!【取材・文/成田おり枝】

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