名匠ジェームズ・アイヴォリー監督作に二度目の出演を果たした日本人俳優とは
『眺めのいい部屋』(86)、『モーリス』(87)、『ハワーズ・エンド』(92)などで知られる名匠ジェームズ・アイヴォリー。御年84歳となる映画界の重鎮が2009年に製作し、第22回東京国際映画祭で「映画人、真田広之の世界」と題したオールナイトイベントで上映されて以来、日本での公開が待ち望まれていた『最終目的地』が10月6日(土)にいよいよ公開されることになった。
アメリカの現代作家、ピーター・キャメロンの同名小説を原作に描く本作は、南米のウルグアイを舞台に、自ら命を絶った作家を中心に、彼の妻、作家の愛人と娘、兄とそのパートナー、作家の伝記を執筆するために訪れた一人の青年、それぞれが抱える事情と人間模様を巧みに織り込み、人生を見つめ直す物語。そのなかで『羊たちの沈黙』(91)のレクター博士役などで知られる名優アンソニー・ホプキンズ演じる作家の兄アダムの恋人という大役を務めているのが、ジェームズ・アイヴォリー監督作に二度目の出演となる真田広之なのだ。
25年間連れ添ったパートナーという関係性のアンソニー・ホプキンス演じるアダムと真田広之演じるピーター。彼らの間に流れる空気は、おだやかな愛情に満ちていて、ピーターがアダムの首にスカーフを巻くシーンでは、まるで長年連れ添った夫婦のようなリラックスしたムードを醸し出している。しかし、この場面はアンソニー・ホプキンスと真田広之の初共演シーンだったというのだから驚きだ。まさに、ふたりの卓越した演技力からこそ生まれる雰囲気と言えるだろう。
彼ら恋人たちと、ウルグアイの片田舎で生活を共にする人々を演じるのは、『ミスティック・リバー』(03)などで知られるアメリカの実力派女優ローラ・リニーと『アンチクライスト』(09)で第62回カンヌ国際映画祭女優賞を受賞したシャルロット・ゲンズブール。そうそうたる面々との共演シーンでも臆することなく、自然体の空気感をまとっている真田広之の名演技を是非スクリーンで味わってほしい。【トライワークス】