月面ナチスが地球を侵略!? 映画ファンのカンパで作った快作『アイアン・スカイ』の監督を直撃!

インタビュー

月面ナチスが地球を侵略!? 映画ファンのカンパで作った快作『アイアン・スカイ』の監督を直撃!

月面ナチスVS地球防衛軍という図式っていったい何!?そんなトンデモ宇宙戦争を描いた野心作が、フィンランド発のSF映画『アイアン・スカイ』(9月28日公開)だ。来日したティモ・ヴオレンソラ監督に単独インタビュー。198cmという、そびえるような長身の陽気なナイスガイが、映画ファンから集めたカンパで作ったというユニークな本作の製作秘話を聞かせてくれた。

第二次世界大戦後、実はナチス残党が月に逃げ込み、月の裏側に巨大な秘密基地を作っていた。2018年、彼らは地球を侵略しに帰って来る。何とも斬新な設定のSF映画だが、さらに世界中の映画ファンからのカンパ750万ユーロ(約7億5000万円)で製作されたという資金調達の仕方も実にユニークだ。監督は「今、これまでの我々の期待、願いを超えた結果になっています」と嬉しそうに語った。

メジャースタジオに頼らず、本作のような規模の大作を成功させた現状についても話してくれた。「アメリカのスタジオは、資金の出どころから使用の内訳まで、全てをコントロールしたがるんです。だから、『アイアン・スカイ』のようなインディーズ映画については、あまり快く思われてないんです。でも、将来的には、こういう資金調達のやり方も受け入れられてくるんじゃないでしょうか。僕自身も将来的にはハリウッドで映画を撮ってみたいと思っています」。

ナチスの史実を扱うに当たり、入念なリサーチをしたというヴオレンソラ監督。「歴史書から陰謀説、都市伝説に近いようなもの、たとえばナチが秘密裏に開発したといわれる兵器の話や、UFOの研究本、ウィキペディアなどを色々と読みあさりました。奇想天外な話ではありますが、もしかしてあったかもしれないと、何%でも皆さんが思ってくださるようなリアリティを与えたいと思いました」。

調べているうちに、驚くようなネタも出てきたという。「ナチはかなりいろんな研究をしていました。第二次世界大戦後に、その研究者が秘密裏にアメリカやロシアに連れて行かれ、名前を変えさせられた後、研究を続けていたということも最近発覚しました。そういう人材がかなり多かったらしく、それには驚きました」。

本作は、一見コメディだが、痛烈な政治批判のメッセージも入っている。ヴオレンソラ監督は「本作で言いたかったことは、自分のことは自分で考えて行動しなさいってことです。政治家たちの言うことを聞くのではなく、しっかりと自分で物事を考えて判断することが大事だと思う」。

影響を受けた監督は、リドリー・スコット、スティーヴン・スピルバーグ、宮崎駿、デヴィッド・リンチ、ポール・バーホーベン。本作の壮大な世界観を見れば納得だ。既に本作の続編と、前日談を描いた作品のプロジェクトが進んでいる。「続編の方がかなり進んでいます。前日談は映画ではなく、もしかしてテレビシリーズになるかもしれない」とのこと。ちなみに続編についても、同じような資金調達で製作される予定だ。

映画祭にも引っ張りだこの本作だが「コメディは特に各国で受け止められ方が違うので、それを見るのも楽しいです」とヴオレンソラ監督は語る。日本でもフィンランド映画祭2012のオープニングで上映され、大盛況で迎えられた快作は大スクリーンで見るべき映画だ。【取材・文./山崎伸子】

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